野の百合、空の鳥

アニメ・漫画・文学を「読む」

2024ベストYouTube

2024年のベストYouTubeを発表したい。 と言ってもやはり、ごくごく個人的な「ベスト」以上のものではない。YouTube動画というのもまた、多すぎるのであり、他人のトップ画面を見せてもらえば分かるように、YouTubeのオススメ欄はあまりにも似通った動画で固…

2024ベストマンガ

2024ベストマンガを発表したい。 今年もあまりマンガを読めなかった。というより、マンガって多すぎる。 ゆえにかなり偏りのあるランキングになっているが、ご寛恕願いたい。なお、選び方としては、2024年に発表された作品からまずベスト10を決めたあと、惜…

2024ベスト読み切り

ノミネート 胃下舌ミィ「みっちゃんの皮膚」 上田さかひら「言葉のないところ」 鳥井泳「美しいもの」 綿本おふとん「創作文芸サークル「キャロット通信」の崩壊」 岡田索雲「ある人」 壽久「君がいないと毎日は生きれない」 小野寺こころ「保健の授業聞いて…

2024ベストアニメ

2024ベストアニメを発表したい。 今年は基本的に、すべてのクールで1話だけは全部のアニメ見ようと心がけていたので、ふつうの配信にはないアニメや長いあいだやり続けているアニメなどを除けば、TVシリーズはだいたいのアニメに眼を通したと思う。 ただし、…

話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

「話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選」に初めて参加させていただきます。 さしあたってのルールは以下の通りです。 ■「話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選」ルール 2024年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。 1作品につ…

公転する太陽──山田尚子『きみの色』における惑星とポエジーについて

※本記事はネタバレを含みます。 “太陽” としてのトツ子 “公転” するきみとルイ 回転する “惑星” たち 星の友情 “公転” する “太陽” ポエジーの “宇宙” おわりに:太陽といっしょになった海 p.s. “太陽” としてのトツ子 『きみの色』は、トツ子が “太陽” であ…

アニメーション的快楽を求めて——『小市民シリーズ』第2話における “リアリティ” について

はじめに——意味から逃れて 図01:直線的な画面 たとえば以上のような直線的な構図に、1話から引きつづき、境界線のメタファーを見出すことは可能だろうか? なるほどたしかに、ここでも小鳩と小佐内は、光の境界線やコンクリートの境界線、それから窓ガラス…

越境のための分断――『小市民シリーズ』第1話における “線” について

はじめに 1 分断としての “線” 1.1 「狐」と「狼」の分断 1.2 「探偵」と「犯人」の分断 1.3 他者との分断 幕間:「小市民」としての “線” 2 越境のための “線” 2.1 「無能感」としてのフレーム 2.2 「全能感」としての越境 2.3 小さな逸脱としての越境 2.4 …

文学フリマ東京38(5/19)参加作品のお知らせ

文学フリマ東京38 bunfree.net タイトルの通り、2024年5月19日(日)東京流通センターで開催される文学フリマ東京38に参加します。 文学フリマとは、小説や詩歌、評論・研究作品の同人誌即売会です。コミケの文字媒体版、みたいな感じでイメージすると分かり…

noteにも短い文を投稿してゆくことにしました。

note.com タイトルの通りです。 これまではなんとなくもてあましていたnoteですが、映画の感想やちょっとした考察など、短い文章は note のほうに投稿してゆく、という方針にしました。 これまで短い文章は Twitter (https://x.com/zaikakotoo?t=QCWCAJSptB…

「橋」渡しをするとはどういうことか—— 『キズナイーバー』第7話の演出について

1. 「交通」のメタファー 橋を架けるということが、心が「通う」ことのメタファーであるというのは、たとえばフランス語の« communication » が ——むろん「コミュニケーション」の謂いである——、その昔「交通」と訳されていたことからも伺える。 そうでなく…

アニメーションよりも「速く」——『天国大魔境』第10話(五十嵐回)におけるマスコットと車について

はじめに——アニメは「時間」でできている アニメーションが「時間」をそこに表現できたとして、鑑賞者が体験するのは、そのアニメーションとちょうど同じ時間だけなのか。 一見して、そうでしかないように思われる。つまり、30分のアニメを見たときに、鑑賞…

【『恋くれ』1巻 感想・考察】「言葉」の「鍵」をひらかれて——光莉と悠の関係性読解を中心に【これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。】

はじめに 完璧な三角形などといったものは存在しない。 まっすぐ書いたつもりの線はどこかいびつで、等間隔にならべたはずの頂点はどこかズレてしまう。完璧な三角形があるとすればそれは、けっしてたどり着けない理想のなかだけだ。あるいは理想のなかでさ…

2023年おもしろかったYouTube——2023年をふりかえって③

「2023年おもしろかったアニメ」編 ↓ www.zaikakotoo.com 「2023年おもしろかったマンガ」編 ↓ www.zaikakotoo.com YouTube 光の曠達(TERECO) 私立パラの丸高校 崩壊スターレイル 各種料理動画 各種VTuber 才華としての活動 寄稿 青春ヘラver.8 ボーカロイ…

2023年おもしろかったマンガ——2023年をふりかえって②

【アニメ編はこちら】 www.zaikakotoo.com マンガ 読み切り ジャンプ系 週刊少年ジャンプ ジャンプ+ その他 講談社系 週刊少年マガジン ヤングマガジン アフタヌーン なかよし その他 トーチweb コミックビーム スペリオール 成人向けコンテンツ さらにその…

2023年おもしろかったアニメ——2023年をふりかえって①

はじめに——イメージを眼差すこと Vilhelm Hammershøi, Interior, 1899, Oil paint on canvas, 64.5×58.1, Tate. 具体的な一枚から始めよう。 デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイの描く室内は、いつもどこか〈暗さ〉を抱えている。閉ざされた扉や振り…

2023年春アニメ感想

はじめに 数をこなせばよいというわけでもないと前置きして、それでも数多く見ることの報いとして、相応の出遭いがあることは強調したい。 都度、思いがけない出遭いを積み重ねることが生きるということなら、アニメを見る体験のほうがむしろ、生きることに…

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)感想——テクノロジー、類型、様式美

はじめに コナン映画、おもしろすぎてひっくり返った。 検索から来られる方を想定して言うと、以下に記す感想は、もしかしたら求めている「感想」とは違うかもしれない。たとえば私は、黒ずくめの幹部の正体は実はコイツで~とか、実は原作の第〇〇話が伏線…

グリッドマンユニバース 感想——あるいは虚構/フィクションとその反省について

はじめに 「人間は虚構を信じられる唯一の生命体なんだよ」 『グリッドマンユニバース』が虚構賛歌であることは、おそらく誰の眼にも明らかだろう。うろ覚えだが、上記のようなセリフがあり、それが今作を象徴していたと思う。 が、私はこのセリフに少々面を…

「ふたり」の居場所——『彼が奏でるふたりの調べ』小考

はじめに 左右には元来、さまざまな意味が持たされてきた。 馴染み深いのは着物だろうか。着物はふつう、「右前」に着る。「左前」は死者の着方だからだ。 あるいはロベール・エルツ『右手の優越』を持ち出すまでもなく、聖なる右側、俗なる左側、という観念…

【俺ガイル結2】感想・考察「偽物」の承認——あるいは、葉山は誰の「言葉」が欲しかったのか

『俺ガイル』は「言葉」をめぐる物語だ。 『結2』を読み終わったいま、改めて、胸を張ってそう言える。「自分だけの「言葉」を探す物語」、そうまとめられた Final シーズンの変奏が『結』シリーズであると、今巻を通じて、改めて確信した。 まとめれば、(…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』最終回「輪るピングドラム」とは何か【24話】

はじめに 私は運命って言葉が好き。 (『輪るピングドラム』24th stationより) たった一言がこんなにも重い。 「運命」を呪い、そして「運命」に呪われた「何者にもなれない」子どもたち。その「選ばれなかった」子どもたちが、ようやく「運命」を受け入れ…

【ルックバック 考察】不在と現前のあわいで——『ルックバック』におけるマンガ表現と支持体

藤野と京本が行く道に、風花が散る。 そこに描かれているのが「雪」だ、ということを、おそらく最初は誰も疑わない。2人は「雪」のなかを歩いているのだし、暖かく着込んだその姿は、私たちに寒さという感覚さえ伝えてくる。 しかしよく見てほしい。そこに映…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑮『ピンドラ』はセカイ系か?【21-24話】

はじめに 〈セカイ系〉っていう言葉がある。 定義としては、東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』にあるような「主人公と恋愛相手の小さく感情的な人間関係(「きみとぼく」)を、社会や国家のような中間項の描写を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終…

2022年をふりかえって

はじめに——セカイ "が" もっと近くに すごく近いこと/すごく遠いこと 〈近く〉なった「戦争」 リアルとフィクションの混交 アニメ 劇場アニメに関して TVシリーズおすすめ アニメ①『時光代理人 -LINK CLICK-』 アニメ②『ちみも』 アニメ③『BIRDIE WING -Gol…

コミケ(C101)にて俺ガイル本とピンドラ本を頒布します

はじめに 俺ガイル同人誌 「他者」がある/いること 他人としての「他者」 「外部」としての「他者」 『俺ガイル』同人誌詳細 ピンドラ同人誌『Malus』 ピンドラ同人誌を紙で出す理由 『ピンドラ』同人誌の内容 おわりに——コミケ情報もあるよ 【追記】通販に…

2022夏アニメ40本見た感想

はじめに タイトル通り、完走したアニメ40本見た感想を記す(なお、『うたわれるもの』や『シャドウバース』など、部分的に見たものもあるが、前者は前作を忘れすぎていてもったいないと思って視聴をやめ、後者は諸事情によりピックアップして見た)。 ※感想…

【劇場版ピンドラ後編 感想】「きっと何者かになれる」

※ネタバレ注意。本記事は劇場版ピンドラ前編+後編のネタバレ、およびアニメ放映版本編のネタバレを含みます。 ※また、筆者は一度しか劇場版を見ておらず、記憶だけを頼りに書いているため、本編と齟齬をきたしている可能性があります。 ※基本的には、劇場版…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑭「きっと何者にもなれない」とはどういうことか【19-20話】

はじめに 19-20話は、陽毬の過去編がメインの話となっている。 だが例のごとく、過去編というよりは、そこで語られている内実のほうが重要である。とくに、19-20話では「選ばれない」「きっと何者にもなれない」「氷の世界」「生存戦略」「運命の果実をいっ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑬こどもブロイラーとは何か——透明な存在の不透明な内実【17-18話】

0.0. こどもブロイラーとは何か——設定上の回答—— こどもブロイラー(『輪るピングドラム』18th station, ピングループ・MBS, 2011年) 「ここはこどもブロイラーだよ」 「こどもブロイラー?」 「いらない子どもたちが集められる場所」 […] 「ここで僕らは…