野の百合、空の鳥

アニメ・漫画・文学を「読む」

noteにも短い文を投稿してゆくことにしました。

note.com タイトルの通りです。 これまではなんとなくもてあましていたnoteですが、映画の感想やちょっとした考察など、短い文章は note のほうに投稿してゆく、という方針にしました。 これまで短い文章は Twitter (https://x.com/zaikakotoo?t=QCWCAJSptB…

「橋」渡しをするとはどういうことか—— 『キズナイーバー』第7話の演出について

1. 「交通」のメタファー 2. 繰り返しショット 3. 明かりを灯すということ——赤/緑 おわりに——「橋」渡しをするとはどういうことか (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 1. 「交通」のメタファー 橋を架けるということが、心が「通う」こと…

アニメーションよりも「速く」——『天国大魔境』第10話(五十嵐回)におけるマスコットと車について

はじめに——アニメは「時間」でできている アニメーションが「時間」をそこに表現できたとして、鑑賞者が体験するのは、そのアニメーションとちょうど同じ時間だけなのか。 一見して、そうでしかないように思われる。つまり、30分のアニメを見たときに、鑑賞…

【『恋くれ』1巻 感想・考察】「言葉」の「鍵」をひらかれて——光莉と悠の関係性読解を中心に【これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。】

はじめに 完璧な三角形などといったものは存在しない。 まっすぐ書いたつもりの線はどこかいびつで、等間隔にならべたはずの頂点はどこかズレてしまう。完璧な三角形があるとすればそれは、けっしてたどり着けない理想のなかだけだ。あるいは理想のなかでさ…

2023年おもしろかったYouTube——2023年をふりかえって③

「2023年おもしろかったアニメ」編 ↓ www.zaikakotoo.com 「2023年おもしろかったマンガ」編 ↓ www.zaikakotoo.com YouTube 光の曠達(TERECO) 私立パラの丸高校 崩壊スターレイル 各種料理動画 各種VTuber 才華としての活動 寄稿 青春ヘラver.8 ボーカロイ…

2023年おもしろかったマンガ——2023年をふりかえって②

【アニメ編はこちら】 www.zaikakotoo.com マンガ 読み切り ジャンプ系 週刊少年ジャンプ ジャンプ+ その他 講談社系 週刊少年マガジン ヤングマガジン アフタヌーン なかよし その他 トーチweb コミックビーム スペリオール 成人向けコンテンツ さらにその…

2023年おもしろかったアニメ——2023年をふりかえって①

はじめに——イメージを眼差すこと Vilhelm Hammershøi, Interior, 1899, Oil paint on canvas, 64.5×58.1, Tate. 具体的な一枚から始めよう。 デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイの描く室内は、いつもどこか〈暗さ〉を抱えている。閉ざされた扉や振り…

2023年春アニメ感想

はじめに 数をこなせばよいというわけでもないと前置きして、それでも数多く見ることの報いとして、相応の出遭いがあることは強調したい。 都度、思いがけない出遭いを積み重ねることが生きるということなら、アニメを見る体験のほうがむしろ、生きることに…

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)感想——テクノロジー、類型、様式美

はじめに コナン映画、おもしろすぎてひっくり返った。 検索から来られる方を想定して言うと、以下に記す感想は、もしかしたら求めている「感想」とは違うかもしれない。たとえば私は、黒ずくめの幹部の正体は実はコイツで~とか、実は原作の第〇〇話が伏線…

グリッドマンユニバース 感想——あるいは虚構/フィクションとその反省について

はじめに 「人間は虚構を信じられる唯一の生命体なんだよ」 『グリッドマンユニバース』が虚構賛歌であることは、おそらく誰の眼にも明らかだろう。うろ覚えだが、上記のようなセリフがあり、それが今作を象徴していたと思う。 が、私はこのセリフに少々面を…

「ふたり」の居場所——『彼が奏でるふたりの調べ』小考

はじめに 左右には元来、さまざまな意味が持たされてきた。 馴染み深いのは着物だろうか。着物はふつう、「右前」に着る。「左前」は死者の着方だからだ。 あるいはロベール・エルツ『右手の優越』を持ち出すまでもなく、聖なる右側、俗なる左側、という観念…

【俺ガイル結2】感想・考察「偽物」の承認——あるいは、葉山は誰の「言葉」が欲しかったのか

『俺ガイル』は「言葉」をめぐる物語だ。 『結2』を読み終わったいま、改めて、胸を張ってそう言える。「自分だけの「言葉」を探す物語」、そうまとめられた Final シーズンの変奏が『結』シリーズであると、今巻を通じて、改めて確信した。 まとめれば、(…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』最終回「輪るピングドラム」とは何か【24話】

はじめに 私は運命って言葉が好き。 (『輪るピングドラム』24th stationより) たった一言がこんなにも重い。 「運命」を呪い、そして「運命」に呪われた「何者にもなれない」子どもたち。その「選ばれなかった」子どもたちが、ようやく「運命」を受け入れ…

【ルックバック 考察】不在と現前のあわいで——『ルックバック』におけるマンガ表現と支持体

藤野と京本が行く道に、風花が散る。 そこに描かれているのが「雪」だ、ということを、おそらく最初は誰も疑わない。2人は「雪」のなかを歩いているのだし、暖かく着込んだその姿は、私たちに寒さという感覚さえ伝えてくる。 しかしよく見てほしい。そこに映…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑮『ピンドラ』はセカイ系か?【21-24話】

はじめに 〈セカイ系〉っていう言葉がある。 定義としては、東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』にあるような「主人公と恋愛相手の小さく感情的な人間関係(「きみとぼく」)を、社会や国家のような中間項の描写を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終…

2022年をふりかえって

はじめに——セカイ "が" もっと近くに すごく近いこと/すごく遠いこと 〈近く〉なった「戦争」 リアルとフィクションの混交 アニメ 劇場アニメに関して TVシリーズおすすめ アニメ①『時光代理人 -LINK CLICK-』 アニメ②『ちみも』 アニメ③『BIRDIE WING -Gol…

コミケ(C101)にて俺ガイル本とピンドラ本を頒布します

はじめに 俺ガイル同人誌 「他者」がある/いること 他人としての「他者」 「外部」としての「他者」 『俺ガイル』同人誌詳細 ピンドラ同人誌『Malus』 ピンドラ同人誌を紙で出す理由 『ピンドラ』同人誌の内容 おわりに——コミケ情報もあるよ 【追記】通販に…

2022夏アニメ40本見た感想

はじめに タイトル通り、完走したアニメ40本見た感想を記す(なお、『うたわれるもの』や『シャドウバース』など、部分的に見たものもあるが、前者は前作を忘れすぎていてもったいないと思って視聴をやめ、後者は諸事情によりピックアップして見た)。 ※感想…

【劇場版ピンドラ後編 感想】「きっと何者かになれる」

※ネタバレ注意。本記事は劇場版ピンドラ前編+後編のネタバレ、およびアニメ放映版本編のネタバレを含みます。 ※また、筆者は一度しか劇場版を見ておらず、記憶だけを頼りに書いているため、本編と齟齬をきたしている可能性があります。 ※基本的には、劇場版…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑭「きっと何者にもなれない」とはどういうことか【19-20話】

はじめに 19-20話は、陽毬の過去編がメインの話となっている。 だが例のごとく、過去編というよりは、そこで語られている内実のほうが重要である。とくに、19-20話では「選ばれない」「きっと何者にもなれない」「氷の世界」「生存戦略」「運命の果実をいっ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑬こどもブロイラーとは何か——透明な存在の不透明な内実【17-18話】

0.0. こどもブロイラーとは何か——設定上の回答—— こどもブロイラー(『輪るピングドラム』18th station, ピングループ・MBS, 2011年) 「ここはこどもブロイラーだよ」 「こどもブロイラー?」 「いらない子どもたちが集められる場所」 […] 「ここで僕らは…

20秒の美学、加速する音楽——「式浦。」から整理する2020年初頭におけるボカロ曲の諸特徴

はじめに. 平均20秒のボカロ曲 身体は正直だって言ってんの [Explicit] Shikiura Records Amazon 「式浦。」楽曲たち 音楽が加速している。 所狭しと並ぶ画一的なサムネを見れば、そこにある楽曲たちの長さがすべて20秒前後であることがわかるだろう。 「式…

【劇場版ピンドラ前編 感想】「きっと何者にもなれないお前たち」から「きっと何者かになれるお前たち」へ

※ネタバレ注意。本記事は劇場版ピンドラ前編のネタバレ、およびアニメ放映版本編のネタバレを含みます。 ※また、筆者は一度しか劇場版を見ておらず、記憶だけを頼りに書いているため、本編と齟齬をきたしている可能性があります。 ※基本的にはアニメシリーズ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑫「嫌だわ、早くすり潰さないと」の意味――「罪」編――【16話】

はじめに ——ピンドラをあらためて整理してみる—— ピンドラは桃果(モモカ)と眞悧(サネトシ)の代理戦争だ、とまとめてみることは、――とりわけ初見の人に——図式的な理解を与えるのには有効であろう。 つまり、桃果の意志を引き継いで「ピングドラム」を探そ…

【俺ガイル 考察】「待たなくていい」の射程——由比ヶ浜結衣は「負け」ていない?——

はじめに. 由比ヶ浜結衣は「負け」たのか? 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(以下『俺ガイル』)は、一見するといわゆる「雪乃エンド」で終わったように思われ*1、実際そう解釈することもできる。 たしかに、14巻(以下巻数は原作の表記に従…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑪「タワー」と「呪い」——時籠ゆりについて——【14~15話】

はじめに——「嘘つき姫」—— 14-15話は、主に時籠ゆりの話になっている。 とりわけ15話は、ゆりの過去が明らかになるとともに、桃果のもつ「運命の乗り換え」の能力とその代償の説明となっているという点で重要である。 そのほかにも細かい伏線はあるのだが、…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑩メリーさんの羊とは?【12~13話】

はじめに. 「メリーさんの羊」を中心に…… 12~13話で起こった出来事をまとめるのは簡単だ。つまり、陽毬がまた倒れて、眞悧がそれを助けた。それだけだ。 しかしながら、12~13話には、起こった出来事としてまとめられないエッセンス——それも非常に重要なエ…

2021年をふりかえって

現実と虚構、リアルとフィクション 「これはパイプではない」 René Magritte, La Trahison des images この一枚から始めよう。 《イメージの裏切り》と題されたルネ・マグリットのあまりにも有名なこの絵画は、なんとも逆説的な場をそこに展開している。 描…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑨「嫌だわ、早くすり潰さないと」の意味——「愛」編——【11話】

はじめに 今回はとりわけ真砂子の「愛」についてのセリフを検討したい。 というのは、それが真砂子の「愛」について語る数少ない機会だから、という理由もあるのだが、それよりも、『ピンドラ』が「愛」の物語であるからには、そのセリフは『ピンドラ』全体…

【俺ガイル結1】感想・考察「言葉」にならない「選択」

はじめに どうして『結』を読むのだろう。 『俺ガイル』は一度完結した物語だ。一度結ばれた物語をもう一度ほどいて結び直す、それにいったい何の意味があるのだろうか。 結衣が好きだから、「結衣エンド」が見たいから、「本編」に納得していないから……。そ…