野の百合、空の鳥

アニメ・漫画・文学を「読む」

公転する太陽──山田尚子『きみの色』における惑星とポエジーについて

※本記事はネタバレを含みます。 “太陽” としてのトツ子 “公転” するきみとルイ 回転する “惑星” たち 星の友情 “公転” する “太陽” ポエジーの “宇宙” おわりに:太陽といっしょになった海 p.s. “太陽” としてのトツ子 『きみの色』は、トツ子が “太陽” であ…

アニメーション的快楽を求めて——『小市民シリーズ』第2話における “リアリティ” について

はじめに——意味から逃れて 図01:直線的な画面 たとえば以上のような直線的な構図に、1話から引きつづき、境界線のメタファーを見出すことは可能だろうか? なるほどたしかに、ここでも小鳩と小佐内は、光の境界線やコンクリートの境界線、それから窓ガラス…

越境のための分断――『小市民シリーズ』第1話における “線” について

はじめに 1 分断としての “線” 1.1 「狐」と「狼」の分断 1.2 「探偵」と「犯人」の分断 1.3 他者との分断 幕間:「小市民」としての “線” 2 越境のための “線” 2.1 「無能感」としてのフレーム 2.2 「全能感」としての越境 2.3 小さな逸脱としての越境 2.4 …

文学フリマ東京38(5/19)参加作品のお知らせ

文学フリマ東京38 bunfree.net タイトルの通り、2024年5月19日(日)東京流通センターで開催される文学フリマ東京38に参加します。 文学フリマとは、小説や詩歌、評論・研究作品の同人誌即売会です。コミケの文字媒体版、みたいな感じでイメージすると分かり…

noteにも短い文を投稿してゆくことにしました。

note.com タイトルの通りです。 これまではなんとなくもてあましていたnoteですが、映画の感想やちょっとした考察など、短い文章は note のほうに投稿してゆく、という方針にしました。 これまで短い文章は Twitter (https://x.com/zaikakotoo?t=QCWCAJSptB…

「橋」渡しをするとはどういうことか—— 『キズナイーバー』第7話の演出について

1. 「交通」のメタファー 橋を架けるということが、心が「通う」ことのメタファーであるというのは、たとえばフランス語の« communication » が ——むろん「コミュニケーション」の謂いである——、その昔「交通」と訳されていたことからも伺える。 そうでなく…

アニメーションよりも「速く」——『天国大魔境』第10話(五十嵐回)におけるマスコットと車について

はじめに——アニメは「時間」でできている アニメーションが「時間」をそこに表現できたとして、鑑賞者が体験するのは、そのアニメーションとちょうど同じ時間だけなのか。 一見して、そうでしかないように思われる。つまり、30分のアニメを見たときに、鑑賞…

【『恋くれ』1巻 感想・考察】「言葉」の「鍵」をひらかれて——光莉と悠の関係性読解を中心に【これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。】

はじめに 完璧な三角形などといったものは存在しない。 まっすぐ書いたつもりの線はどこかいびつで、等間隔にならべたはずの頂点はどこかズレてしまう。完璧な三角形があるとすればそれは、けっしてたどり着けない理想のなかだけだ。あるいは理想のなかでさ…