野の百合、空の鳥

アニメ・漫画・文学を「読む」

アニメ-輪るピングドラム

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』最終回「輪るピングドラム」とは何か【24話】

はじめに 私は運命って言葉が好き。 (『輪るピングドラム』24th stationより) たった一言がこんなにも重い。 「運命」を呪い、そして「運命」に呪われた「何者にもなれない」子どもたち。その「選ばれなかった」子どもたちが、ようやく「運命」を受け入れ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑮『ピンドラ』はセカイ系か?【21-24話】

はじめに 〈セカイ系〉っていう言葉がある。 定義としては、東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』にあるような「主人公と恋愛相手の小さく感情的な人間関係(「きみとぼく」)を、社会や国家のような中間項の描写を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終…

【劇場版ピンドラ後編 感想】「きっと何者かになれる」

※ネタバレ注意。本記事は劇場版ピンドラ前編+後編のネタバレ、およびアニメ放映版本編のネタバレを含みます。 ※また、筆者は一度しか劇場版を見ておらず、記憶だけを頼りに書いているため、本編と齟齬をきたしている可能性があります。 ※基本的には、劇場版…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑭「きっと何者にもなれない」とはどういうことか【19-20話】

はじめに 19-20話は、陽毬の過去編がメインの話となっている。 だが例のごとく、過去編というよりは、そこで語られている内実のほうが重要である。とくに、19-20話では「選ばれない」「きっと何者にもなれない」「氷の世界」「生存戦略」「運命の果実をいっ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑬こどもブロイラーとは何か——透明な存在の不透明な内実【17-18話】

0.0. こどもブロイラーとは何か——設定上の回答—— こどもブロイラー(『輪るピングドラム』18th station, ピングループ・MBS, 2011年) 「ここはこどもブロイラーだよ」 「こどもブロイラー?」 「いらない子どもたちが集められる場所」 […] 「ここで僕らは…

【劇場版ピンドラ前編 感想】「きっと何者にもなれないお前たち」から「きっと何者かになれるお前たち」へ

※ネタバレ注意。本記事は劇場版ピンドラ前編のネタバレ、およびアニメ放映版本編のネタバレを含みます。 ※また、筆者は一度しか劇場版を見ておらず、記憶だけを頼りに書いているため、本編と齟齬をきたしている可能性があります。 ※基本的にはアニメシリーズ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑫「嫌だわ、早くすり潰さないと」の意味――「罪」編――【16話】

はじめに ——ピンドラをあらためて整理してみる—— ピンドラは桃果(モモカ)と眞悧(サネトシ)の代理戦争だ、とまとめてみることは、――とりわけ初見の人に——図式的な理解を与えるのには有効であろう。 つまり、桃果の意志を引き継いで「ピングドラム」を探そ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑪「タワー」と「呪い」——時籠ゆりについて——【14~15話】

はじめに——「嘘つき姫」—— 14-15話は、主に時籠ゆりの話になっている。 とりわけ15話は、ゆりの過去が明らかになるとともに、桃果のもつ「運命の乗り換え」の能力とその代償の説明となっているという点で重要である。 そのほかにも細かい伏線はあるのだが、…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑩メリーさんの羊とは?【12~13話】

はじめに. 「メリーさんの羊」を中心に…… 12~13話で起こった出来事をまとめるのは簡単だ。つまり、陽毬がまた倒れて、眞悧がそれを助けた。それだけだ。 しかしながら、12~13話には、起こった出来事としてまとめられないエッセンス——それも非常に重要なエ…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑨「嫌だわ、早くすり潰さないと」の意味——「愛」編——【11話】

はじめに 今回はとりわけ真砂子の「愛」についてのセリフを検討したい。 というのは、それが真砂子の「愛」について語る数少ない機会だから、という理由もあるのだが、それよりも、『ピンドラ』が「愛」の物語であるからには、そのセリフは『ピンドラ』全体…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑧「新世界より」/「アリアドネの糸」【10話】

はじめに 前回、前々回とやや長い記事がつづいた。 そこで今回はやや短めに、ゆっくり10話だけで立ち止まってみることにする。 今回は「新世界より」と「アリアドネの糸」、この二つのモチーフを読み解く。

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑦物語にできることは ――「地下」・「状況」・「コミットメント」――【7~9話】

はじめに 「地下」という場所 前回から引き続き、『ピンドラ』と村上春樹(作品)との関連について、今回はとりわけ「地下」というテーマを中心に据え、考察する。 村上春樹は「地下」について以下のように述べている。 アンダーグラウンド (講談社文庫) 作…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑥村上春樹の影響──『かえるくん、東京を救う』を中心に──【7~9話】

1.0. 『ピンドラ』と村上春樹のつながり 本棚に並ぶ「カエルくん~を救う」(『輪るピングドラム』第9駅、ピングループ・MBS、2011年) 陽毬「あの、『かえるくん、東京を救う』って本はどこにありますか?」 (『輪るピングドラム』第9駅「氷の世界」より)…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑤「そらの孔分室」とは何か【7~9話】

1.0. そらの孔分室 「そらの孔分室」(『輪るピングドラム』第9駅、ピングループ・MBS、2011年) 「ようこそ、中央図書館そらの孔分室へ」 (『輪るピングドラム』第9駅「氷の世界」より) 水族館の長いエレベーターを降りると図書館であった。図書館の奥に…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』④「氷の世界」とは何か【7~9話】

1.0. 「氷の世界」 「氷の世界」(『輪るピングドラム』第9駅、ピングループ・MBS、2011年) 『ピンドラ』第9駅のサブタイトルは「氷の世界」である。 しかしなぜ「氷の世界」なのだろうか? 第9駅は、べつに氷のある場所に行く話ではないし、「氷の世界」と…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』③カレーを食べるとはどういうことか?【4~6話】

1.0. どうしてカレーを食べるのか? 『ピンドラ』のカレー(『輪るピングドラム』第3駅、ピングループ・MBS、2011年) どうして『ピンドラ』ではカレーを食べるのだろう? 『ピンドラ』には、やたらとカレーが出てくる。第3話のサブタイトルは「そして私を華…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』②「蠍の火」とは何か【1~3話】

Ⅳ. 「蠍の火」とは何か ⅰ. 『銀河鉄道の夜』における「蠍の火」 Ⅴ. 「子供」は『銀河鉄道の夜』をどう解釈したのか ⅰ. 「愛の話」 ⅱ. 自己犠牲を伴うほどの「愛」は「さいわい」なのか? Ⅵ.「苹果」と「蠍の火」に残された解釈の余地 ⅰ. 『ピンドラ』という…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』①「苹果」とは何か【1~3話】

Ⅰ. はじめに 「僕は運命って言葉が嫌いだ」 (『輪るピングドラム』1st stationより) 「ゼロから見直す『輪るピングドラム』」は、『輪るピングドラム』をもう一度、ゼロから、じっくりと見て考察していこうという試みだ。したがって本企画では、「苹果(リ…