野の百合、空の鳥

アニメ・漫画・文学を「読む」

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)感想——テクノロジー、類型、様式美

はじめに コナン映画、おもしろすぎてひっくり返った。 検索から来られる方を想定して言うと、以下に記す感想は、もしかしたら求めている「感想」とは違うかもしれない。たとえば私は、黒ずくめの幹部の正体は実はコイツで~とか、実は原作の第〇〇話が伏線…

グリッドマンユニバース 感想——あるいは虚構/フィクションとその反省について

はじめに 「人間は虚構を信じられる唯一の生命体なんだよ」 『グリッドマンユニバース』が虚構賛歌であることは、おそらく誰の眼にも明らかだろう。うろ覚えだが、上記のようなセリフがあり、それが今作を象徴していたと思う。 が、私はこのセリフに少々面を…

「ふたり」の居場所——『彼が奏でるふたりの調べ』小考

はじめに 左右には元来、さまざまな意味が持たされてきた。 馴染み深いのは着物だろうか。着物はふつう、「右前」に着る。「左前」は死者の着方だからだ。 あるいはロベール・エルツ『右手の優越』を持ち出すまでもなく、聖なる右側、俗なる左側、という観念…

【俺ガイル結2】感想・考察「偽物」の承認——あるいは、葉山は誰の「言葉」が欲しかったのか

『俺ガイル』は「言葉」をめぐる物語だ。 『結2』を読み終わったいま、改めて、胸を張ってそう言える。「自分だけの「言葉」を探す物語」、そうまとめられた Final シーズンの変奏が『結』シリーズであると、今巻を通じて、改めて確信した。 まとめれば、(…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』最終回「輪るピングドラム」とは何か【24話】

はじめに 私は運命って言葉が好き。 (『輪るピングドラム』24th stationより) たった一言がこんなにも重い。 「運命」を呪い、そして「運命」に呪われた「何者にもなれない」子どもたち。その「選ばれなかった」子どもたちが、ようやく「運命」を受け入れ…

【ルックバック 考察】不在と現前のあわいで——『ルックバック』におけるマンガ表現と支持体

藤野と京本が行く道に、風花が散る。 そこに描かれているのが「雪」だ、ということを、おそらく最初は誰も疑わない。2人は「雪」のなかを歩いているのだし、暖かく着込んだその姿は、私たちに寒さという感覚さえ伝えてくる。 しかしよく見てほしい。そこに映…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』⑮『ピンドラ』はセカイ系か?【21-24話】

はじめに 〈セカイ系〉っていう言葉がある。 定義としては、東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』にあるような「主人公と恋愛相手の小さく感情的な人間関係(「きみとぼく」)を、社会や国家のような中間項の描写を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終…

2022年をふりかえって

はじめに——セカイ "が" もっと近くに すごく近いこと/すごく遠いこと 〈近く〉なった「戦争」 リアルとフィクションの混交 アニメ 劇場アニメに関して TVシリーズおすすめ アニメ①『時光代理人 -LINK CLICK-』 アニメ②『ちみも』 アニメ③『BIRDIE WING -Gol…