野の百合、空の鳥

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コミケ(C101)にて俺ガイル本とピンドラ本を頒布します

はじめに

タイトル通り、コミックマーケットC101(2日目、12/31(土)東地区ペ11b)にて、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の考察・エッセイ・二次小説集と、『輪るピングドラム』考察集を頒布します。

以下、簡単にそれぞれの説明をします。

 

俺ガイル同人誌

こちらは『俺ガイル』の考察・エッセイ・二次小説集で、約2年ほど、discordやtwitterで交流をもっていただいている方々と共同の製作物になります。私は企画と責任編集を務めています。

『俺ガイル』については、並々ならぬ思い入れがある、ということは、折りに触れて当ブログでも言ってきました。

なぜそこまで『俺ガイル』に拘るかというと、『俺ガイル』にはとても大切なことが、豊かに盛り込まれているように思うからです。

それについて少しだけ、以下で説明させてください。

 

「他者」がある/いること

『俺ガイル』に盛り込まれている大切なこと、強いてそれを一言にまとめれば、「他者」がいると教えてくれたこと、となるでしょう。

「他者」と一口に言っても、素朴な「他人」という意味や人間ではない「外部」といった意味までいろいろあると思いますが、それらすべてを含み、さまざまなレベルの「他者」がある/いるということを、『俺ガイル』は教えてくれます。

 

他人としての「他者」

わかりやすいのは「他人」です。八幡が「他人」を「知る」のは、とりわけ6巻以降です。それまでぼっちの世界、独我論的な世界にあった八幡は、雪乃や結衣と関わったゆくなかで、自分の思い通りにならないもの、自分とは何もかも違う「他人」があることを「知る」(ここまでが6巻)。

その過程で、人の真理は理解しているが「感情は理解していない」、人を「傷つけないなんてことはできない」、「関われば傷つけるし、関わらないようにしてもそのことが傷つけるかもしれない」という、至極当たり前のこと――しかし大切なこと――を教わり、「本物」という概念に行き着く(ここまでが9巻)。

 

要するに、それまでアニメやライトノベルでないがしろにされがちだった「他人」――とりわけ女性――を(当然そうでない作品もあるわけですが)、同じライトノベル(アニメ)という枠組みで「発見」した点に、『俺ガイル』の一つの功績がある、とひとまずは言えるでしょう。

とくにライトノベル版の場合、その「他人」の発見が、テクストのレベルでも周到に行われている、という点が、評価すべきさらなる点だと思います。つまり、初めは八幡の一人称視点で描かれていた物語に雪乃や結衣のinterludeが介入し、誰の視点かもわからない「手記」が差し挟まれる。さらにそこに、ときおり作者しか知り得ない「ネタ」や「パロディ」が書き込まれることによって、「作者」さえ相対化される。

こうしたテクストの多様性が、きちんと、自分の知り得ない「他人」の可能性を担保していることが、——偶然であるにせよ——『俺ガイル』の優れた点だと思います。

 

「外部」としての「他者」

さらにそうした多人称的な視点に、物語のなかでやがて見出される「言葉」への懐疑が合わさることによって、今度は「他人」以外の「他者」を呼び込むことになります。

一言で言えば、それはいわば「外部」としての「他者」で、「他人」よりももっと(人間には)どうしようもないもの、それに一瞬でも触れてしまうと、死んでしまうのではないかという恐怖を覚えるような、圧倒的な「外部」のことです。というより「死」それ自体も、それに近いと思います。「他人」も大事なのですが、私にとってはこちらも同じくらい、つよく問題だと感じているものです。

 

先走りすぎたので少し『俺ガイル』の話に戻ります。まずもって、そもそも八幡が「本物」を追及してゆくなかで、関係性の問題が「言葉」の問題へ移ってゆくこと自体、『俺ガイル』の魅力だと言えるでしょう(それが10巻以降の物語です)。

それを駆動しているのは、どんなラベリングも許さない、つまり、名前のついた既存の関係を許さない「本物」概念です。だから「本物」が、あれでもない、これでもない、と、否定してゆくことでしか目標を剔抉できない、否定神学的概念であることは否めません。

とはいえ、それを極めることは、あるいはあらゆる否定を逃れる肯定になるのではないでしょうか。……というのが、私が今回同人誌に寄稿した文章になります。詳細は追ってお知らせしますが、私が今回書いたことは主に2つあり、①近年のラブコメにおける「宙吊り」の乗り越え、という、近年のラブコメディに関する整理、②そうした整理に従った、『俺ガイル』の特異な点、「ラブコメ」としての位置づけ、の2つがそれです。

つまり私の論攷は、『俺ガイル』を一度「ラブコメ」とみなすことでさまざまな文脈と連絡できるようにするための下準備、ないしたたき台であり、そのように『俺ガイル』を読むための再読の誘い、です。

 

私が考える『俺ガイル』が導く「外部」としての「他者」の話は、そこでは書けませんでしたが、俎上は整えました。もうひとつの材料としては、以前書いた終わりなき俺ガイル ――来るべき読解のために―― - 野の百合、空の鳥がありますが、これと、今回書いたことを併せれば、だいたい輪郭が描けるのではないかと思います。

とはいえもう少し時間と言葉を費やす必要があるので、それは今後の課題としたいと思います。

 

『俺ガイル』同人誌詳細

大事な情報が後になってしまいましたが、『俺ガイル』同人誌の詳細は、公式アカウント(俺ガイル研究会@土曜日東地区ペ11b (@kangairureplica) / Twitter)や公式note(俺ガイル研究会|note)をご覧ください。価格や同人誌タイトルなども、今後こちらで発表します(しました)。

twitter.com

note.com

とくに公式noteでは、同人誌に関する情報だけでなく、ネットで公開すべきと判断した『俺ガイル』に関する論攷やエッセイ、討論会の記録等をアップするかもしれません(かなり未定ですが)。とにかく、同人誌と併せてご覧いただければ嬉しいです。

『俺ガイル』に関しては以上です。

 

ピンドラ同人誌『Malus』

こちらは、このブログに掲載しているゼロから見直す『輪るピングドラム』シリーズの書籍化になります。書籍化と言ってもべつにどこかの出版者様から出していただくわけではなく、完全に個人の同人誌です。

こちらに関してはネットですでに公開済みのもの(これから公開するもの)を収録するので、なぜわざわざ紙で?と思われるかもしれません。

それについて少しだけ説明させてください。

 

ピンドラ同人誌を紙で出す理由

理由は大きく2つです。

  1. 紙のほうが後に残るから
  2. もっと多くの人に知ってもらうため

あまり言葉を尽くすないかもしれませんが、少しほぐして言います。

 

まず1について、ネット環境が整って電子書籍が一般になっている今日ですが、やはり紙のほうが残るのではないか、という実感があります。

「残る」というのは物理的な話だけではありません。物質でそこに「在る」ほうが手に取る頻度が増えるとか、物理的に「在る」ほうが(良くも悪くも)「正史」として検討される範疇に入るが高い(もちろん紙即「正史」となるわけではありません)とか、そういった意味で「残る」ということです。

 

次に2については、1とも関わるのですが、やはり紙で出したほうが、今までリーチしなかった層の方にリーチする、ということがあり得ます。広大なネットの海といえども、やはり偏りがあり、届くべき人に届いていない可能性があります。私があえて(「批評」などではなく)「考察」という言葉を使いつづけるのも、内容の性質のほかに、リーチする層を広げたいという思いがあるわけですが、紙にすることはさらにその層を広げることにつながるように思うのです。

しかしそもそも紙にするほど価値があるのかよ、と石を投げられるかもしれないわけですが……、というより石を投げられないように必死に書いた/書くわけですが、ともかく、紙にする理由としてはだいたい以上です。

ほかにも、そもぞも自分が紙でほしい、という、きわめて個人的な好みもあるのですが、ともかく、紙になっていろいろな人に届けば、それ以上幸せなことはありません。

 

『ピンドラ』同人誌の内容

肝心の内容についてちゃんと書いていなかったように思ったので書きます。

内容は、基本的にはゼロから見直す『ピンドラ』シリーズと同様に、TVアニメ版24話分の考察と先日公開された映画の前後編の感想を載せます。それに加えて、上に書いたような刊行理由と、そもそもなぜピンドラを考察しようと思ったかについてのあれこれなどを含めたあとがき的な何かを、少し加えようと思います。

まだ済んでいない21~24話までの考察はおそらく紙に先に載せ、ネットでも公開する可能性が高い、というか多分そうしますが、ピンドラ考察の動機などは、紙限定にしようかと思います。一応せっかく買ってくれる方がいるので、と思い、あとがきが、ほんの少しの分量ではあると思いますが(まだこれから書くのでわからないですが)、そのあとがき的な何かが多少プライオリティになればよいな、と思います。

あと価格は、たぶん1冊1000円です。ともあれ、それも変わるかもしれないので、詳細はTwitterなどでお知らせします。それから通販あるんですか?という、当然の疑問があると思うのですが、正直わかりません。気持ち的には、たとえ損をしたとしても、できるかぎり通販をして、当日来られない方々に届けたいという思いがありますが、もしも万が一、奇跡的に会場で売切れたりとか、やむにやまれぬお金の事情があったりなどしたら、通販できない可能性もあります。

【追記】通販はします。ひとまずメロンブックスで取り扱っていただくことにしました。もろもろの準備を済ませ、会場で現物も渡したので、あとは正式な納品を待つだけです、1月上旬を目処に販売が開始される予定です。また販売されましたら、こちらでも追記しますので、それまでどうかお待ちいただければ幸いです。

とにかく、『俺ガイル』に負けないくらい、『ピンドラ』にも思い入れがあり、おそらくいまのタイミングでないと出せないと判断したので、出します。

『ピンドラ』本については以上です。

 

おわりに——コミケ情報もあるよ

以上、『俺ガイル』本と『ピンドラ』本の説明でした。

最後に少しだけ、コミケ自体について補足を。私が参加するのは、有明・東京国際展示場 (東京ビッグサイト)で開催されるコミックマーケット101の、2日目、12/31(土)です。ブースは東地区(ビックサイトには東棟と西棟と南棟などがあります)ペ11bです。詳細は公式HP(コミックマーケット101(及び今後の開催)のご案内)をご確認ください。

今回も、コミケはチケット制なので、チケットをご購入いただかなければ入場できません。チケットの販売は始まっています。以下をご覧ください。

www.comiket.co.jp

みなさま、それぞれ事情がおありでしょうから、無理のない範囲で、ご参加いただければ幸いです。

そしてもちろん、当日会場に来られない方も当然おられるでしょう。通販については、『俺ガイル』本も『ピンドラ』本も、今の段階では未定です。気持ち的にはできるかぎり通販にも回したいですが、ちょっと何があるかわからないので、申し訳ないけれどわからないです。

ともかく、ひとまずはコミケでお会いできれば幸いです。私も出店側としては初めての参加です。いろいろな思い入れもあり、もはややや感慨深いのですが、何はともあれ、よろしくお願いいたします。

 

【追記】通販について

繰り返しになりますが通販はします。『ピンドラ』本は1月上旬を目処にメロンブックスで発売される予定です。『俺ガイル』本に関しては、ありがたいことに会場で完売してしまったため、まずは印刷所に再販を申し込み、それから通販での販売手続きをする予定です。

いずれにせよ、申し訳ないのですがもうしばらくお時間をいただきたいです。よろしくお願いします。

なにか続報があり次第、また追記します。

 

【再追記】通販開始されました

『ピンドラ』本の通販が開始されました。下記ページからご購入いただけます。よろしくお願いします!

https://www.melonbooks.co.jp/fromagee/detail/detail.php?product_id=1798801

『俺ガイル』本については、もう少々お待ちくださいませ。

 

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