※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように思われたのでアーカイブとして残します。ご承知おきくださいませ。
Ⅰ. 「ヘラクレスとセイレーン」
「ヘラクレスとセイレーン」、それが第3話のタイトルでした。
「ヘラクレス」の方は、ギリシア神話では獅子を絞め殺したり、蟹を踏んでつぶしたりしているので、マッチョなイメージのある薬師寺・ヘラクレス・康介のことを指すのでしょう。
他方、「セイレーン」は美しい歌声で人を惑わす上半身が人間の女性の怪物なので、歌手で人心掌握の上手そうな小宮カリナのことを指しているのでしょう。
第3話は、そのタイトルにふさわしく、ヘラクレスとセイレーン、両者の選挙戦が、ビフロストやインスペクターたちの思惑と絡まりながら展開していきました。
3話はかなり重要な情報が盛りだくさんだったので、今回は情報整理に重きを置きつつ、ビフロストや灼、炯について考察していきたいと思います。
Ⅱ. 「薬師寺vs小宮カリナ」選挙戦まとめ
まず、「薬師寺vs小宮カリナ」の選挙戦がなかなか話が複雑になってきているので、ここで一度整理しておきたいと思います。
ⅰ. 軸にあるのは「移民賛成派vs移民反対派」
まず確認しておきたいのは、選挙戦の軸は「移民賛成派vs移民反対派」にあるということです。
簡単に言うと、優生党が支持する薬師寺・ヘラクレス・康介は移民賛成派、肯定党が支持する小宮カリナは移民反対派です。
薬師寺たち移民賛成派は、より多くの難民を受け入れたり、移民の権利を尊重することを目指しているようです。
反対に、移民反対派は、小宮カリナが演説で「隣人政策」を説いていたように、移民ではない日本の人々を優遇することを目指しているようです。
そして、後で確認しますが、この「移民賛成派vs移民反対派」という争いが、ビフロストやインスペクターたちの思惑とからんでいます。
ⅱ. 3話の事件で小宮カリナは不利になった
3話では、薬師寺の秘書だったリー・アキ氏が殺されましたが、その結果、小宮カリナの支持率は下がってしまいました。
というのは、リー・アキが殺されたのは小宮カリナ派の仕業だと思われたからです。
おそらく、移民の受け入れには反対でも、移民に対する過激な暴力に反感を覚えた人々が、小宮カリナ支持から離れていったのでしょう。
ところでそのリー・アキ殺害事件は、3話で新しく登場した2ndインスペクターの榎宮春木(エノミヤハルキ)が仕組んだものらしいのですが、何のためにそんなことをしたのでしょう?
というより、そもそもインスペクターやビフロストは移民賛成派と移民反対派のどちらなのでしょう?
ⅲ. ビフロストは移民賛成派? 移民反対派?
結論から言うと、(今のところは)ビフロストは移民反対派だと考えられます。
というのは、3話の冒頭でラウンドロビンが「優先候補 小宮カリナ」と言っているからです。(※追記 : もしかしたら「優先候補」ではなく「優勢候補」と言っているかもしれないということに気が付きました。字幕で確認でき次第訂正したいと思います。)
しかしそうだとすると、ビフロストの手先である2ndインスペクターがリー・アキを殺させ、移民反対派である小宮カリナの支持率を落とすという事態は、ビフロストが移民反対派であることと矛盾するように思えますね。
なぜビフロストはわざわざ自分で自分の首を絞めるようなこと(リー・アキ殺害)を行ったのでしょうか?
ⅳ. リー・アキ殺害の理由は?
考えられる理由は2つです。
- リー・アキ殺害は結果的に小宮カリナの支持率を上げることに繋がるから
- リー・アキ殺害によってビフロストの「ゲーム」を有利に進められるコングレスマンがいるから
まずそもそも 「誰の伏せ札が、薬師寺陣営を襲撃したのかしら?」というビフロストの女性コングレスマン(=裁園寺)の発言から、リー・アキ殺害を仕組んだ黒幕はコングレスマンの中の誰かだと考えられます。
コングレスマンなら、リー・アキを殺害すれば小宮カリナの支持率を下げることは予測できたでしょうから、それを承知の上であえてリー・アキを殺したのは、結局はそれが自分(たち)の利益につながることだからなのでしょう。
したがって、リー・アキ殺害は選挙戦での小宮カリナの勝利、あるいはビフロストでの「ゲーム」の勝利というビフロストかあるいはコングレスマン個人の利益につながっているのだと考えられます。
以上が選挙戦のおおまかな流れです。
これに加えて3話では、選挙戦を裏でコントロールしようとするビフロストやインスペクターたちの謎が少しずつ明らかになりました。
次はそのビフロストやインスペクターたちについて少し考察をしたと思います。
Ⅲ. ビフロストについて
ⅰ. コングレスマンは身分を自由に選べる?
3話冒頭で、「どのカードで生活している?」というセリフがありましたが、それに対する答えとなるような場面が3話の中ににあったように思われます。
それが法斑静火(ホムラシズカ)が急にホテルのオーナーになっていた場面です。つまり、「どのカードで生活している?」の答えは「ホテルのオーナーとして生活している」なのではないでしょうか?
要するにビフロストのコングレスマンは、誰かの身分を奪って生活することができるのではないでしょうか?
ホテルマンの発言から急にホテルのオーナーが変わったであろうことがうかがえるので、ビフロストは急に誰かの地位を奪えるくらい裏から社会をコントロールする力がかなり強いと考えられます。
またここから、ビフロストの「ゲーム」で勝つと手に入る「カード」は、お金なのではなく、社会的地位など、もっと規模の大きいものだということが推測できます。
ⅱ. ビフロストの「ゲーム」の景品は「身分」?
同じく3話冒頭で、代銀が法斑に向かって「良い手札がそろったはずだ」と言うセリフがあります。
「そろったはずだ」ということは、今まではまだ手札(「カード」)はそろっていなかったという意味だと解釈できます。つまり、法斑が「良い手札」をそろえたのは、前回までのゲームで勝ったからだと推測できます。
したがって、そのことと法斑がホテルのオーナーに急になったことを併せて考えると、ビフロストの「ゲーム」の景品は「身分」や「会社」といった大きな規模のものだと推測できます。
そして以上のことから、ビフロストの正体に関して以下のようなことが考えられます。
ⅲ. ビフロストの正体は、社会を裏からコントロールする機関である
つまりビフロストの正体は、社会を裏からコントロールする機関だということです。
別にこれは見ていれば漠然とわかることですが、3話からはその規模と歴史が少し推測できるように思います。
まず「再び私たちの存在をシビュラに知らせる結果になりかねないわ」というセリフからは、ビフロストがまだシビュラにはっきり認知されていないだろうことが推測されます。
ビフロストが日本で起こる事件を「ゲーム」として楽しんでいることを考えると、ビフロストの手の及ぶ範囲は日本であって、あまり表立ったことには干渉できないと考えられます。
ⅳ. ビフロストは何年前から機能している?
また、ビフロストが何年くらい前から機能しているのかも大雑把に推測できます。
まず、3話の事案は「第10785号事案」でしたが、1話の事案は「第10779号事案」だったことから、そんなに長くないスパンで「事案」がやってくることがわかります。
例えば1日に1事案~2日に1事案のスパンで事案がやってくるとすると、ビフロストは約29年~59年くらい前から「ゲーム」をしていただろうことが推測できます。
シビュラシステムの確立と鎖国完了が3期の時間軸から約60年前、シビュラシステムが安定期となるのが3期から40年前、アニメ第1期は3期の8年前ですから、*1ビフロストは古ければシビュラシステム確立当時から、新しくてもアニメ1期以前からは機能していたのではないかと推測できます。
そう考えると、ビフロストはかなり前からずっとシビュラに気づかれず日本を裏からコントロールしてきたことになりますね。
もちろん1日に対する事案の数によってはかなりの誤差が生まれてしまうので(例えば1日に2事案あったとするとビフロストは15年位前から作動していたことになる)、数字は目安でしかありませんが、すごく新しい組織というわけではないということは推測できます。
ビフロストについては以上です。
次は灼と炯について、とくに炯の兄が灼の父に殺されたということについて確認・考察していきます。
Ⅳ. 灼・炯について
ⅰ. 3話新情報まとめ
灼(アラタ)と炯(ケイ)に関する3話の新情報をまとめると以下のようになります。
- 灼と炯は中学と高校の同級生(二人とも福岡県立宇美町中学、東峰学院高等学校出身。ただし炯は中学途中で「第9連邦学校」に転入、高校も中退し軍隊に入隊)
- 灼も炯も2118年に専門学校を休学している
- 灼は常守の推薦、炯は霜月の推薦で公安局に入局
- 常守朱は「人殺しの元監視官」(廿六木(トドロキ)執行官のセリフより)
- 灼の母(聖子)は2108年に重病により安楽死を選択、父(篤志)は2118年に自殺。篤志の死は機密事項
- 炯の妻(舞子・マイヤ・ストロンスカヤ)は視覚障害で治療中。舞子も灼や炯と同様に家族を失っている(「マイちゃんも炯も俺も、なんで家族を失わなきゃならなかったのか」という灼のセリフより)
- 炯の兄 : 煌(アキラ)・ワシリー・イグナトフは殺害された。その容疑者は灼の父 : 篤志
これで灼や炯が元から親密だった理由や、家族を失ったような描写(1話の仏壇や遺影に祈る描写)の謎は解けたように思いますが、それ以上に衝撃の事実が明らかになりました。
それは炯の兄(=煌)を灼の父(=篤志)が殺し、その篤志が自殺したという事実です。
果たしてそこではいったい何が起こったのでしょう?
ⅱ. 篤志は自殺ではない……?
炯の兄 : 煌(アキラ)の死に関しては、情報が少なすぎて詳しいことを推測するのは難しいです。
ただ、灼の父(篤志)に関しては少し推測できることがあります。
それは、篤志は自殺したのではなくシビュラの一員となっているのではないかという推測です。
その理由としては、
- 篤志がOPでシビュラの脳の上に立っているカットがあるから
- 篤志の自殺が機密事項扱いになっているから
- 前回の考察の「仮説2」で述べたように*2、篤志はシビュラの一員となって局長として常守に殺されたと考えられるから
の3つが挙げられます。
根拠としてはあまり強くはありませんが、篤志の自殺を「機密事項扱い」にする理由が他に見当たらないので、私は、今のところはこれが一番有力だと考えています。
ⅲ. シビュラの判定を疑うような発言?
廿六木「さっきはなんで止めた? ドミネーターは執行しろって言ってたろうが」
灼「それを決めるのは人間であるべきです。そのために、ドミネーターには引き金がついてるんですから」
(『PSYCHO-PASS 3』第3話「ヘラクレスとセイレーン」より
3話の中盤、ホテルで強襲してきた人物を逃がしてしまったシーンで、上のようなセリフがありました。
なぜ灼はそのように、シビュラの判定を疑うような発言をしたのでしょう?
これもあくまで推測にすぎませんが、例えば以下の2つの理由が考えられます。
- 灼はシビュラシステムの正体を知っているから
- 灼はドミネーターが暴走した場面を見たことがあるから
1. 灼はシビュラシステムの正体を知っているから
1の場合、灼はシビュラが人間の集合だと知っていて、その判定に不信感を抱いているから「それを決めるのは人間であるべきです」と言ったと説明できます。
この場合はさらに、なぜ灼はシビュラの正体を知っているの?という疑問がわきますが、それは篤志が教えてくれたからだと推測できます。
そう推測していくと、
- 灼=免罪体質
- 篤志は1話で「お前のサイコパスは濁らない。すべてはシビュラシステムからお前を守るためなんだ」と言っていた
- 篤志はシビュラシステムの一員となった
などの、前回までの仮説*3とも、一応つじつまは合います。
2. 灼はドミネーターが暴走した場面を見たことがあるから
また、もし灼がドミネーターが暴走した場面に遭遇していたとしたら、「それを決めるのは人間であるべきです」と言うのも当然だと考えられます。
「ドミネーターが暴走した場面」いうのは、例えば、何の犯罪も犯していないはずの父 : 篤志がドミネーターで執行された場面とか、何の罪もない炯の兄 : 煌がドミネーターで殺害された場面とか、そういった場面を想像していただければわかりやすいと思います。
あるいは1期でも禾生局長の持ったドミネーターが急にエリミネーターになった場面がありましたよね? 「ドミネーターが暴走した場面」というのは、そういう場面のことです。
なぜそういう場面を想定したかというと、父の死や炯の兄の死にドミネーターの暴走が関わっていれば、それに不信感をつのらせ、「それを決めるのは人間であるべきです」とドミネーターを疑うような発言をするのは当然だと思えるからです。
ⅳ. OPでドミネーターを素手で止めているのは灼?
そしてそう考えると、OPに「誰かがドミネーターの作動を素手で止めるカット」が存在する意味もわかるように思います。
上のように解釈すると、まずこの素手でドミネーターの作動を止めている人物は灼(アラタ)だと考えられます。
そうすると、このカットの意味は、「シビュラシステムの判定を疑っている」という灼の考えの表現だと意味付けできます。
3話における灼と炯に関する情報とその考察は以上です。
Ⅴ. 前回の仮説について
ⅰ. 「ビフロスト=出島」はなさそう……
前回「仮説1 : ビフロスト=出島」と「仮説2 : 常守朱はシビュラシステムをかばって犠牲となった」という2つの仮説を立てたので、それについて少し述べておきたいと思います。
まずビフロスト=出島というのは、今回考察したこと、特にビフロストがかなり前から機能していたであろうことから違うかなと思いました。
3期のテーマの一つが開国なので、ビフロストは開国にともなってできた組織なのかなと考えていたのですが、どうもそうではなく、ビフロストは開国にともなって不利益をこうむりだしたという線が正しそうです。
ⅱ. やっぱり篤志がシビュラに取り込まれてたとすると色々おかしい気が……
次に2つ目の「仮説2 : 常守朱はシビュラシステムをかばって犠牲となった」という仮説についてなのですが、やはり篤志がシビュラに取り込まれていたとすると色々おかしいと思いました。
まず、インスペクターたちの名刺と篤志の名刺のデザインが一致していることなどから、おそらく篤志もインスペクターかコングレスマンだったことは推測できます。そうすると、もし篤志がシビュラに取り込まれていたとしたらビフロストの存在はシビュラにばれてしまっていることになりますが、それは3話で明らかになった「ビフロストの存在がまだシビュラに知られていない」ということと矛盾します。
したがって、この仮説は少し考え直さねばならなりません。
具体的には、常守がシビュラをかばって監禁されたというのはよいとしても、それは局長の中に入った篤志を殺すためではないと考えられます。
ただそうなると、常守が局長を殺す理由がいよいよわかりません。
もちろん常守が局長を殺したというのはミスリードの可能性もあるので、それもまたわかりません。
今はあまり良い仮説が思い浮かばないので、もう少し考えて、何か思いついたら後で追記したいと思います。
ⅲ. そもそも「開国」っていつしたの?
というか「開国」っていつしたんでしょう?
3期のアニメはもうすでに開国した状態から始まっていたので、それがいつ行われたのかは明言されていません。
ただ最初の劇場版の段階では開国はしていなかったはずなので、最初の劇場版の時間軸=2116年から3期の時間軸=2020年の間に開国が行われたのだろうと、大雑把な推測はできます。
(劇場版第二弾(Sinners of the System)でも開国したという描写はありませんでしたが、その間に開国した可能性はゼロとは言い切れないように思えます(とくにcase3は舞台が海外だったので、ただ言及されなかっただけの可能性も考えられます)。)
炯の兄が殺され、灼の父が自殺したのは2118年なので、開国したのもこのあたりなのでしょうか……?
常守の事件も、おそらく開国に絡んでいると思うので、炯の兄、灼の父の事件と絡めてもう一度考え直してみたいと思います。
Ⅵ. 「ヘラクレスとセイレーン」の末路
ギリシア神話では、ヘラクレスもセイレーンもやや悲惨な最期を遂げます。
ヘラクレスは猛毒で苦しんだ挙句、炎で自分の身を焼き死んでゆきます。他方セイレーンは、自分の歌で惑わない人物に出会ったため、海に身投げして自殺します。
果たして「薬師寺vs小宮カリナ」の選挙戦はどのような結末を迎えるのでしょうか。どちらかが無事に都知事となるのか、それともいずれかはギリシア神話のように悲惨な運命をたどってしまうのでしょうか?
4話が待ち遠しいですが、またそれまでにいろいろ考えておきたいと思います。何か良いことを思いついたら追記するかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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