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ダリフラ本編考察⑤「赤」の人類仮説

 「赤」の人類仮説

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OPより ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

前回の考察④では、「ダリフラカラー」のうちの片方である「青」という色を手掛かりに叫竜の謎、そしてフランクスの謎の解明に挑みました。

今回はもう一方の「ダリフラカラー」である「赤」側に焦点を当てて考察していきたいと思います。

前回見たように、「叫竜の色」、とくに叫竜の「血」の色と言えば「青」でした。

それとは対照的に、「赤」い血を有するのが「人類」です。

今回はその「赤」という色を割り当てられた「進化した人類」の謎を解明するとともに、そこから見えてくるオトナとコドモの違いに迫っていきたいと思います。

 

 

「進化した人類」

その血の色が象徴するように、「赤」とは「人類の赤」だと考えられます。

ただし注意したいのは『ダリフラ』における「人類」は、「進化した人類」であるという点です。*1

なるほどたしかに『ダリフラ』世界で「コドモ」たちは、叫竜と戦うために生まれ、ナンバリングされることで「オトナ」たちに管理され、現実とは全く異なる様相を呈しているのでした。

しかしそれらは言うならば「世界観の進化」にすぎないのではないのでしょうか。

「進化」したのは「世界」ではなく、「人類」です。

この点には重大な示唆があります。

 

「オトナ」には皆「ツノ」が生えている?

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

先日たいへん興味深い言及を目にしました。

その言及とは、ゼロツーの「ツノ」やフランクス操縦時ピスティルの頭上に浮かんでいた「ツノ」、フランクス博士の「ツノ」、そして目から上を隠すオトナたちから新人類に叫竜の血が流れているのではないかと示唆するものです。

また、特にオトナたちが目から上を隠していることから、オトナたちには皆「ツノ」が生えているのではないかと推測してる方も見かけました。

これらはたいへん魅力的な着想です。

特に、オトナたちには皆「ツノ」が生えているという仮定は「進化した人類」を容易に説明します。

つまり、「進化」とは「ツノ」のことで、新人類は進化の過程で「ツノ」を獲得したのだと説明できるわけです。

私も、「ツノ」が生えている以外に目から上を隠す理由などない!と意気込んでこの仮定に基づき考察を進めていたのですが……

この仮定は第1話にあっけなく否定されてしまいます。

 

「ツノ」がないオトナ……?

きっかけになったのはこのシーンです。

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第1話「独りとヒトリ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

「ツノ」が……ない……

第1話冒頭からゼロツーの護衛をしていたこのスキンヘッドのオトナたち、よく見なくてもツルッツルです。

これを見るとやはりオトナには「ツノ」が生えておらず、「ツノ」はゼロツー特有のもののように思えます。

思い返せば、「キミはボクのツノを見ても怖がらなかったね」等のセリフも、やはり「ツノ」がゼロツー特有のものであることを物語るものだと考えられます。

また、『ダリフラ』が「生物」をテーマに据え、より現実に即したアニメであるという点から見ても、「オトナ」たち皆に「ツノ」が生えているというのは少し苦しいかもしれません。

『ダリフラ』世界が現実からどれだけ時のたった未来なのかはわかりませんが、性淘汰などの影響で人間に「ツノ」が生えるというのはあまりに無用な進化となってしまわないでしょうか。

 

「目から上」を隠すオトナ

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第1話「独りとヒトリ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

それではどうしてオトナたちは目から上を隠しているのでしょう

そう思ってもう一度本編を見たところあることに気が付きました。

それはオトナたちが「目から上」を隠しているということです。

そう「目から上」です。

先ほどの画像をもう一度見てもらえるとわかる通り、スキンヘッドの彼らも「サングラス」のようなものは掛けています。

つまり、隠しているのは「ツノ」なのではなく、「目」なのではないでしょうか。

思えば第1話の「入隊式」でもオトナたちは「目」を隠した布の上からわざわざスコープでイチゴたちパラサイトを見ていました。

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第1話「独りとヒトリ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

見返すと相当シュールなこの画ですが、逆に考えれば、オトナたちには、そうまでして目を隠したい理由があるのではないでしょうか

 

なぜ目を隠すのか?

ではなぜ目を隠す、いえ、隠さなければならないのでしょう。

結論から言えば、それは、目を隠さなければ紫外線に目をつぶされてしまうからだと考えられます。

そもそも『ダリフラ』世界の地表には、強力な紫外線が降り注いでいると考えられます。

それではなぜ非常に強力な紫外線が降り注ぐのか、それを順序だてて簡単に説明すると以下のようになります。

  1. 「マグマ燃料」の超深度掘削の影響により地殻変動・環境破壊が起こり緑が失われる。
  2. 緑が失われる、すなわち地上の植物が失われたことにより、光合成などで発生するはずであった酸素が供給されず、大気中の酸素量が極端減少する。
  3. 酸素の減少により、大気中の酸素がもととなって生成されるはずのオゾンの生成量も減り、オゾン層も薄くなる。
  4. オゾン層が吸収するはずであった大量の紫外線が地上に降り注ぐ。

もちろん話はそう簡単ではありません。

緑が失われることによる酸素の減少についても、オゾンの生成量の減少についても、一概には言えません。

あくまで一例として、このようなことが原因となり、紫外線が強力となることが考えられるという程度にとどまります。

しかし、オトナたちが何らかの理由で白日の下にその目をさらせないことはたしかでしょう。

それは13都市でオトナたちが住んでいるのが光の届かないプランテーション内部であったことからもうかがえます。

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第3話「戦う人形」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

以上のことから、少なくとも、オトナたちは何らかの理由により、地上では目を隠しておかなければならないということがわかります。

このように考えることは一見すると筋が通っているように思えます。

しかしここで新たな疑問が生まれます。

たしかに『ダリフラ』世界の地上では紫外線がより多く降り注いでいるのかもしれません。

しかしそうだとすると、なぜヒロたちコドモは目を隠していないのでしょう、彼らは目をやられたりはしないのでしょうか。

これはもっともな疑問です。

この疑問を考えていくと、新たな仮説が見えてきます。

 

別種の生物

話を整理しましょう。

オトナたちは強力な紫外線などの影響により、地上では目を隠しておかなければなりません。

しかしながら同じ人類であるはずのヒロたちコドモは目を隠す必要がないようです

それはなぜでしょうか。

結論から言えば、それは「オトナ」と「コドモ」が別種の生物だからだと考えられます

なぜこのような結論に至ったのか、その過程を理由とともに見ていきましょう。

 

「オトナ」になった「コドモ」はいない?

まず違和感を抱いたのは第5話のこの場面です。

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

ゾロメが「オトナになれたコドモっているんですか?」と聞くと、26都市の090*2が「オトナになれたコドモ……?」と一瞬理解しがたいそぶりを見せた後、仲間に耳打ちされ、「少なくともうちにはいないよ」と答えます。

子供が成長すると大人になる、というのは現実世界の話です。

『ダリフラ』というフィクションの世界では、現実の常識はそう簡単には通用しません。

「オトナ」は「大人」ではないのです、「コドモ」は「子供」ではないのです

090はまるで「コドモ」が「オトナ」に成るということが理解できないかのようなそぶりを見せていました。

つまり、「コドモ」が「オトナ」になるということは『ダリフラ』世界ではありえないこと、ほぼ不可能なことなのではないでしょうか

そこで考えられるのが、「オトナ」と「コドモ」が別種の生物であるという可能性です。

これならば、090が「コドモ」が「オトナ」になるということが理解しがたいそぶりを見せるのも納得できそうです。

 

「オトナ/コドモ」

そもそもなぜ『ダリフラ』では「オトナ/コドモ」というカタカナの表記をとるのでしょう。

ここで単純に連想されるのは「ヒト」という表記です。

「ヒト」と書くのはどんなときかというと、それは生物の分類に用いるときです。

我々人間は生物学上の分類で言えば、「ヒト科ヒト属」「ヒト」という「種」です。

「オトナ」「コドモ」もこれと同じではないでしょうか。

つまり「オトナ」は「大人」を意味するのではなく、「オトナ」という分類名、同様に「コドモ」も「子供」を意味するのではなく、「コドモ」という分類名なのではないでしょうか。

このような分類名へのこだわりはフランクスやプランテーションの名前の由来にも見られますし、そのこだわりが「オトナ」と「コドモ」という表記に反映されているとしても不思議はありません。

しかし「オトナ/コドモ」という表記にこめられた意味はこれだけではありません。

 

「親子関係」

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第1話「独りとヒトリ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

なるほどたしかに「オトナ」は「大人」ではなく、「コドモ」は「子供」ではありません。

しかしやはり「オトナ」と「コドモ」と言うからには、そこには何らかの「親子関係」があるのではないでしょうか

そこで考えられるのが、オトナがコドモを創ったということです。

すなわち、「オトナ」と「コドモ」は、「創った側」「創られた側」という点において「親」「子」という関係を結んでいるのではないでしょうか。

このことは本編の様々な場面から示唆されているように思われます。

例えば、コドモがコードナンバーによって機械的にナンバリングされていることや、「フランクスという兵器に乗って戦うことが唯一の使命だと教えられた」ことなどはその最たる例です。

ここには明確な力関係が見て取れます。

また、このようにオトナとコドモを別種の生物と考えると、『ダリフラ』のいろいろな謎がうまく整理できるように思えるのです。

 

ナナ・ハチは成長したコドモ?

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第2話「繋がるということ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

例えばナナハチの謎です。

先ほどから疑問に思っていた方もいらっしゃるかもしれません。

ナナやハチはオトナではないのか?)、と。

これはもっともな疑問です。

しかしそれは、ナナやハチが「オトナ」ではなく、「コドモ」という生物だとしたらどうでしょう

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OPより ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

OPをよく見ると画像にあるように小さく "CODE XX" とあるように、ナナやハチにも "CODE" が割り振られていると考えられます。

『ダリフラ』世界においては、オトナに管理されるコドモに割り振られるものが、コードナンバー、すなわち "CODE" でした*3

したがって、"CODE" が割り振られたナナやハチも、オトナたちに管理されるコドモなのではないかと考えられるわけです。

もちろん、ナナは007、ハチは008を意味するのではないかということも理由にはなりえます。

以上のことから、ナナとハチは「コドモ」が成長した姿と整理できるわけです。

 

オトナとコドモの違いは?

話を整理しましょう。

オトナたちが「目」を隠していることに着目すると、オトナとコドモはどうやら別種の生物らしいということがわかりました。

そしてオトナとコドモが別種の生物であるならば、「オトナ/コドモ」という表記や「ナナ・ハチ」などいろいろなことに説明がつきそうだということが確認できました。

しかしこれらのことは「別種の生物である」ということを説明しきれていません。

つまり、「別種」と言うからには、オトナとコドモとでは明確に区別できる特徴があるはずです

それではオトナとコドモでは何が異なるのでしょう、オトナとコドモの違いとはいったい何なのでしょう。

 

オトナたちがコドモを創ったということ

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第1話「独りとヒトリ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

オトナとコドモの違いを探る上で一番のポイントとなるのは、コドモにとっては「フランクスという兵器に乗って戦うことが唯一の使命だ」ということです。

「コドモはオトナによって創られたのだ」ということが重要な点です。

オトナの立場に立ってみてください。

突如として現れた叫竜に対抗すべく、オトナたちはやっとのことでフランクスという兵器を開発しました。

しかしフランクスに乗って戦おうにも、外に出るとなれば失明の危機に陥る可能性もありますし、何より命が危険にさらされてしまいます。

なるほどそれなら一番リスクが低くて、効率の良いコドモという生物を創って、代わりに戦わせればいいのです

では、どうすれば一番効率が良いでしょうか?

まず、フランクスは高いエネルギー効率をほこるマグマ燃料を動力源とした方が、効率よく動きそうです。

しかし、叫竜ほどの巨大生物に対抗するほどの大きさを持ったフランクスを、全自動で動かすと細かい対応力を失ってしまう……。

それならば、フランクスをヒト型にして、コドモと完全に同調させて動かせるようにすればよいのではないでしょうか?

しかしどうすればマグマ燃料を動力源とするフランクスに一番効率よく同調させられるのでしょう?

そうか、コドモも創るのだからいっそのことそのコドモにマグマ燃料に同調しやすい物質を組み込んでおけばいいじゃないか!

こうして組み込まれた物質が「黄血球」なのではないでしょうか?

 

 

「赤」から「黄」へ

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

こうして話は「赤」から「黄」へと移ろいます。

今回はかなり長くなってしまいましたが、オトナが目を隠しているということに注目し、オトナとコドモが別種であるということを考えてきました。

しかしまだ、「別種」というほどのオトナとコドモとの違いは明らかにしていません。

これらのことには、どうしても「黄」が絡んできます。

次回はこの「黄」を起点にして、改めて『ダリフラ』世界の謎に迫っていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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