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『PSYCHO-PASS 3』7話 感想・考察 「神の名をみだりに唱えてはならない」

Ⅰ. はじめに

『PSYCHO-PASS3』も残り1話となりました。

7話では宗教特区の事件は解決しましたが、やはりまだビフロストや慎導篤志についてなど、謎は多く残っています。また7話は細かいネタが多く盛り込まれていたのが印象的でした。

そこで今回は、前回に引き続き長い目で見たときに重要だと思われる情報を整理しつつ、小ネタについて軽く解説しておきたいと思います。

 

Ⅱ. "Don't take God's name in vain"

ⅰ. 「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

7話のサブタイトルは "Don't take God's name in vain" で、これはモーセの十戒の第三戒である「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」の英訳だと考えられます。

「みだりに唱えてはならない」というのは、要するに自分勝手に神の名前を利用してはならないということです。

不都合なことを神のせいにするのはもちろんもってのほかですが、自分の都合の良い救いを神に求めることも、神の名をみだりに唱えることに当たります。

自分勝手に、都合の良いことだけを神に願ってはいけない、それが「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」の意味するところです。

 

ⅱ. なぜそれが7話のサブタイトルに?

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

ではなぜこの宗教的文言が7話のサブタイトルになっているのでしょう?

思うにそれは、7話が全体として「神の名をみだりに唱え」た人々が罰せられる回だったからではないでしょうか?

「神の名をみだりに唱え」た人々というのは、トーリ・アッシェンバッハとその傘下のヘヴンズリープの信者たちです。

トーリたちは宗教を利用して、その実信者たちを「ユーストレス欠乏症」にし、ヘヴンズリープを武器密輸の隠れ蓑にも使っていました。

 

そして結局彼らは罰を受けました。

トーリは死亡し、信者たちも「悪質な妨害行為」とみなされ大勢連行されていました。

また拡大解釈すれば、そんなトーリに利用されているとわかっていながらも、むしろそのことを利用してテロを遂行しようとした久利須も、「神の名をみだりに唱え」た人物と言えるかもしれません。彼も結局は計画を遂行できないまま死んでしまいます。

以上のように、7話では「宗教」に関わり、神の名を利用しようとした人物たちがことごとく罰を受けました。したがって "Don't take God's name in vain" というサブタイトルは、この話にぴったりのサブタイトルになっていると言えるでしょう。

 

Ⅱ. "Aut viam inveniam aut faciam"

ⅰ. 「道を見つけるか、さもなくば道をつくる」

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

テレーザ、アウマ、久利須、仁世教祖の4人が持っていた懐中時計には "Aut viam inveniam aut faciam" という文字が刻まれていました。

これはラテン語で、「道を見つけるか、さもなくば道をつくる」という意味です。もともとはハンニバルが第二次ポエニ戦争のときに言ったとされる言葉で、イタリア本土を攻撃する際に、海からではなくアルプスを超えるという大胆な策をとった逸話に由来しています。

なぜこの文言が時計に刻まれているのか謎でしたが、7話でその伏線は回収されたように思えます。

 

ⅱ. 表向きの意味

これにはいくつか意味があると考えられるのですが、まず表向きの意味としては、難民保護の困難を乗り越えようというスローガンのようなものだったと考えられます。

そもそもこの懐中時計は難民保護に努めていた人物たちに贈られた記念品でした。したがって直接的には、 "Aut viam inveniam aut faciam" という言葉が難民保護の困難を乗り越えるスローガンになっていたと考えられます。

 

ⅲ. 7話での転用

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

7話ではそれが応用されて、炯や灼たちの捜査上の困難を乗り越えることのメタファーのように使われていたと考えられます。

7話ではまず時計が炯から如月執行官に手渡され、「頼んだぞ」と後を託されます。行き止まりから思い切って河に飛び込む姿はまさに、「道を見つけるか、さもなくば道をつくる」という言葉にぴったりです。(ちなみに如月執行官は公式HPのプロフィールから「元スイミングアスリート」とわかるのですが、そのアスリートっぷりはここで生かされていましたね*1

そのあと時計は如月執行官から灼に手渡されますが、灼も解決の糸口をなんとか探り、都知事のホログラムをまとって囮となることで久利須を追い込みます。これも「道を見つけるか、さもなくば道をつくる」に則した行動だと言えるでしょう。

 

以上のように、懐中時計とそこに書かれた "Aut viam inveniam aut faciam" という言葉はうまく状況と適合し、巧みな表現となっていました。

加えて懐中時計の中にマイクロチップが仕組まれているなど、応用の幅は広く、非常にうまい道具立てだったと言えるでしょう。

 

Ⅲ. ビフロストの行方

ⅰ. 「法斑が奪った兄の席」&衝撃の執行

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

そこまで重要ではないかもしれませんが、7話で西園寺が「法斑が奪った兄の席」と言っていたことから、法斑静火の前のコングレスマンは西園寺の兄だったということがわかりました。

今回のゲームで法斑静火は退場するはずでしたが、トーリの告発があったことで、執行されたのは西園寺の方ということになりました。

衝撃だったのはその「執行」です。まさかあんなに物理的な攻撃だったとは……。

ただドミネーターの「執行」もかなり物理的な攻撃ですし、メカニズムは似ているのかもしれません。ただドミネーターが肉片をまき散らすような攻撃であるのに対し、ラウンドロビンの方は熱で焼き切るような描写でしたね。やはり厳密には別物なのでしょう。

 

ⅱ. そもそもなぜ「執行」されたのか?

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

一歩踏み込んで考えると、なぜ「執行」されたのかは少し疑問です。

代銀は「ゲーム中の過剰な干渉と援助、看過できんよ」などと言っていましたが、はたいてそれが死に値するような行為なのでしょうか?

ラウンドロビンとしてはビフロストの秘密を知っていて、かつへまをした人物を生かしておきたくはないのでしょうが、なかなか過激ですし、どういう基準でそれを判断しているのかは謎です。

ラウンドロビンが「審議完了」と言っていたところから察するに、やはりラウンドロビンの内部では複数名の成員による議論のようなことが行われているのかもしれません。

もちろんそれがシビュラのように「脳」たちの議論か、それとも完全に機械たち(人工知能たち)の議論なのかは定かではありません。

いずれにせよ、ビフロストの謎はまだ解明されそうにないですね。

 

Ⅳ. 「ピースブレイカーの生き残り」

 ⅰ. 「昔の一係へリベンジ」?

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

また7話には「ピースブレイカーの生き残り」「パスファインダーの2人」と呼ばれていた人物らしき2人が登場しました。

気になったのは梓澤が「昔の一係へリベンジしたいんでしょ?」と言っていた点です。

もしもこの2人が「ピースブレイカーの生き残り」なら、「昔の一係へ リベンジ」という言葉からは、「ピースブレイカー」が「昔の一係」によって壊滅(もしくは半壊)させられたのではないかと推測できます。

ここらへんも持ち越しでしょうが、もし彼らが「ピースブレイカー」なら、劇場版SSから「3」までの空白の3年間には、「昔の一係」と「ピースブレイカー」との間に何かしらのコンタクトがあったと考えられます。

 

Ⅴ. 灼=免罪体質

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

ⅰ. 誕生日、眼の色に伏線(?)が?

7話では灼が免罪体質であることが明らかになりました。

ただそれは以前からある程度予期されていたことで、灼の誕生日が槙島の命日(2月11日)であったり、灼の眼の色が槙島の眼の色と同じ黄色であったりという伏線(?)があったようです。

私はそれとは別に慎導篤志の言葉や、メンタルトレースをしても色相が濁らないという特徴から予想はしていましたが、わりと半信半疑ではありました。

ただ今回公式で明らかになったので、改めて灼が免罪体質だとどのようなことが言えるのかを確認しておきたいと思います。

 

ⅱ. 1話における篤志の言葉の謎

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『PSYCHO-PASS3』第1話より©サイコパス製作委員会

2話の記事でも確認した通り、篤志は車の中で「■■■サイコパス■■■■ すべては■■■■ ■■■■■■ お前を守る■■■■■■」という謎の言葉を発していました。*2

7話では、この謎の言葉の前半部分と思われる言葉が灼の幻想の中で言われていました。それが「お前のサイコパスは特別だ」という言葉です。

伏字の文字数としてもこれでぴったりですし、前半部分はこれで合っているのではないかと思われます。

 

問題は後半です。以前私は「すべてはシビュラシステムからお前を守るためなんだ。」と予測していましたが、どうなのでしょうか……?

この予想はまだ当たりともはずれとも言えませんが、灼が免罪体質ならば、やはり篤志が灼をシビュラの成員になることから防いだと考えることは不可能ではないように思えます。

最終回ではわからないかもしれないので、この謎も持ち越しかもしれません。

 

ⅲ. シビュラの狙いは?

灼が免罪体質であるならば、なぜシビュラは灼を監視官として採用したのでしょう?

そのヒントとなるようなこととして、シビュラが「我々にとって最も有効な人材だ。シビュラの盲点を埋められるのはシビュラ一員になれる者だけ」と言っていたことが挙げられます。

そこから察するに、灼は「シビュラの盲点を埋め」るために採用されたと考えられます。

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

では「シビュラの盲点」とはなんでしょう?

パッと思いつくのは、梓澤が行っている「殺意なき殺人の連鎖」です。何回か記事で述べているように、梓澤は殺意がないように、事故に見せかけて殺人を繰り返していたのでした。

7話においては、細呂木局長(シビュラシステム)からも「殺意なき殺人の連鎖……シビュラシステムの裏をかくようなやり方が、極めて不愉快になってきたということだ」と梓澤の行為を不快に思う趣旨の発言も飛び出しました。

メンタルトレースが使える灼は、そのような事故への見せかけをやぶり、人為的な手が介入してきていると見分けられるということなのでしょうか……?

これもはっきりとはわかりませんが、シビュラが灼を利用しようとして監視官に採用しているのは確かなようです。

 

ⅳ. 「狡兎死して走狗煮らる」

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『PSYCHO-PASS3』第7話より©サイコパス製作委員会

そのようなシビュラの発言を受け、常守は「狡兎死して走狗煮らる」と呟きます。

これは『史記』に由来する言葉で、犬にウサギを追いかけさせて、犬がウサギを捕まえた後に、用済みになった犬も煮る(食べてしまう)ということを意味します。

要するにこれは、シビュラが灼を利用するだけ利用して、最後は灼もシビュラシステムに取り込もうとしていることを、常守が機転を利かせて一言で表現した言葉だと考えられます。

その後常守は「誰も使い捨てにはさせない」と、シビュラに相対する意思を見せています。常守としてはやはり、犠牲は最小限に抑えたいようです。

 

Ⅵ. おわりに

今回は、長い目で見たときに重要な情報の整理と、小ネタの回収をしました。

残すところいよいよあと1話ですね。楽しみです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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