※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように思われたのでアーカイブとして残します。ご承知おきくださいませ。
Ⅰ. 梓澤廣一のプロフィールについて
『PSYCHO-PASS 3』第5話にて、梓澤廣一のプロフィールが明らかになりましたが、これが物議を醸しています。
というのは、彼が二係の元執行官であったことが大きいのですが、他にも鹿矛囲桐斗(カムイキリト)が唯一の生存者となった飛行機事故の会社(日空航空)に所属していたことなども注目を集めています。
そこで本記事では梓澤廣一の経歴について、特に「地獄の季節」や「パノプティコン」との関連についてまとめつつ考察していきたいと思います。
<追記>日空航空321便墜落事故の日付について誤りがありましたのでお詫びして訂正いたします。当初は2099年5月と記述しておりましたが、正しくは2099年9月10日です(『PSYCHO-PASSサイコパスOFFICIAL PROFILING2』参照)。なおこれにより議論の大筋に支障はないことを付記いたします。
- Ⅰ. 梓澤廣一のプロフィールについて
- Ⅱ. 梓澤廣一が鹿矛囲桐斗の飛行機事故を起こしたのか?
- Ⅲ. 「地獄の季節」と梓澤廣一との関連について
- Ⅳ. 梓澤が多数の会社を渡り歩いている理由
- Ⅴ. 「ラウンドロビン」=「パノプティコン」……?
Ⅱ. 梓澤廣一が鹿矛囲桐斗の飛行機事故を起こしたのか?
ⅰ. 現時点では起こしたとも起こしてないとも言い切れない
今回梓澤の経歴から、彼が日空航空に所属していたことが明らかになりました。
日空航空とは、鹿矛囲桐斗が唯一生存した「321便墜落事故」の飛行機(詳しくは『PSYCHO-PASS2』第7話参照)を運航していた当の会社です。
したがって、そのことと梓澤が『PSYCHO-PASS3』において様々な事故を誘発させていたことを併せて考えると、梓澤が「321便墜落事故」も誘発させたのではないか?と疑いたくなります。
しかし結論から言えば、現時点では梓澤がその事故を起こしたとも起こしてないとも言い切れないと考えられます。
ⅱ. 321便墜落は2099年、梓澤入社は2100年
まず初めに、そもそも梓澤廣一が日空航空に入社したのは2100年12月のことで、321便が墜落した2099年9月10日よりも後のことです。したがって、鹿矛囲の事故は梓澤が日空航空に所属している間に起きた事故ではありません。
しかしだからといって、それは梓澤が墜落事故に関与していない理由にはなりません。
321便の事故が起きた2099年9月10日には梓澤はまだ執行官だったので、事故に関与しようとすることは不可能ではないと考えられるからです。
ⅲ. 梓澤は墜落事故後に執行官権限を剥奪されている
そして墜落事故後の2100年に梓澤は執行官権限を剥奪されています(ただし梓澤の執行官権限剥奪が99年の事故直後でないことには注目すべきでしょう→これについては後述)。
したがって、墜落事故を仕組んだ結果梓澤の色相が濁り、執行官権限を剥奪されたと考えれば一応筋は通ります。
ただしもちろんこれも筋が通ると言うだけで彼がやった証拠はどこにもありません。
以上のことから、現時点では梓澤は事故を起こしたとも起こしていないとも言い切れないと考えられます。少なくとも言えるのは、梓澤が事故に関与することは不可能ではないということだけです。
ただ、制作陣は登場人物たちのプロフィールを「異常なほど拘って」作っているのはたしか*1なので、何の理由もなく「日空航空」の名前を出したということはないように思えます(ただし同時に梓澤の経歴には偽りが含まれているとも監督から言及されています)。
そこで疑われるのが、梓澤の「地獄の季節」への関与です。
Ⅲ. 「地獄の季節」と梓澤廣一との関連について
ⅰ. 「パノプティコン」と「地獄の季節」
「地獄の季節」を説明するには、まず「パノプティコン」について説明しなければなりません。
「パノプティコン」とは、経済省が発案した、交通と銀行を管制する国民支援システムのことです。
当初それは、「市民の行動と経済活動を監視・記録することで犯罪を未然に防ぎ、最適な生き方を導く」制度と銘打たれ、シビュラシステムに代わる国民支援制度として提案されました。
ところがその「パノプティコン」の交通分野への試験的導入期間に、多大な不具合が発生し始め、交通・航空事故が例年の数十倍に跳ね上がりました。そしてこの多大な犠牲を出した期間こそが「地獄の季節」と呼ばれるものです。
ⅱ. 「地獄の季節」とはいつなのか
問題は「地獄の季節」がいつからいつまでのことなのかということです。
なぜなら、「地獄の季節」の時期によっては梓澤が直接「地獄の季節」に起こった航空事故を仕組んだ可能性も出てくるからです。
まず、鹿矛囲の巻き込まれた日空航空321便の事故が起こった2099年9月は「地獄の季節」に含まれていると考えられるので、おそらくこの2099年9月の前後が「地獄の季節」と呼ばれる期間なのでしょう。
致命的な事故が多発する事態をそんなに長くは放っておかないでしょうから、「地獄の季節」はこの2099年9月の前後数ヶ月~1年程度、すなわち2098年9月~2100年9月の間の期間のどこかと推定してよいでしょう。
ⅲ. 梓澤は「地獄の季節」以降に日空航空に入社?
したがって、「地獄の季節」は長くても2098年9月~2100年9月くらいの期間だと考えられますが、そうなると梓澤が日空航空に入社した2100年12月は「地獄の季節」より少し後ということになります。
これを素直に解釈すれば、「地獄の季節」で責任をとって辞めていった人たちの代わりに梓澤が入社したとなるのでしょう。
したがって少なくとも梓澤は日空航空の内部から「地獄の季節」に関与したわけではないと推定されます。
ただしもちろん、だからといって梓澤が「地獄の季節」に関与していないとは言い切れません。
ⅳ. 「地獄の季節」の直後に執行官権限剥奪?
さきほど「地獄の季節」を2098年9月~2100年9月の間のどこかと推定しましたが、そうなると、むしろ梓澤の「地獄の季節」への関与の疑いは深まります。
というのは、梓澤は2100年8月に執行官権限を剥奪されているからです。「地獄の季節」のいずれかの事故に関与した、だから執行官権限が剥奪された、そう考えるとつじつまが合います。
したがって以上のことから、梓澤が「地獄の季節」に関与していると考えることは不可能ではないと考えられます。
ただもし梓澤がもし「地獄の季節」に関与していたとしても、結局「日空航空」に入社したのは「地獄の季節」が終わった後のことになるわけです。
ではなぜ梓澤は「地獄の季節」の後に「日空航空」に入社したのでしょうか?
Ⅳ. 梓澤が多数の会社を渡り歩いている理由
ⅰ. なぜ入社しては退社してを繰り返すのか?
少し飛躍するのですが、思うに、梓澤が「地獄の季節」の後に「日空航空」に入社した理由には、梓澤が多数の会社を渡り歩いていることが関係していると考えられます。
そもそもなぜ梓澤は多数の会社を渡り歩いているのでしょう?
結論から言えば、それは梓澤が「インスペクター」になったからだと考えられます。
以下で順を追って説明します。
ⅱ. 「ビフロスト」や「インスペクター」には「表の顔」もあるはず
梓澤のプロフィールには、「所属:ビフロスト/職種:ファーストインスペクター」とあり、「ビフロスト」や「ファーストインスペクター」が公的な「所属」や「職種」として認められていることがわかります。
ただしそもそも、私たちがアニメで見ているビフロストやインスペクターたちの所業はいわば「裏の顔」です。つまりビフロストが裏から社会をコントロールしていたり、インスペクターが事件を仕組んだりしていることは『PSYCHO-PASS』の世界では秘密裏に行われていることです。
したがって、「ビフロスト」や「インスペクター」が公的に認められている「所属」や「職種」であるならば、「ビフロスト」や「インスペクター」には「裏の顔」ではない、「表の顔」もあるはずです。
ⅲ. 「インスペクター」の「表の顔」=「監査官」?
その「表の顔」というのが、「インスペクター」の場合は「監査官(英語ではInspector General)」なのではないでしょうか?
「監査官」とは、多大な権力を有する組織の中で、その権力を乱用しないように組織の内側から組織を監視する役割をになう役職です。
よく刑事ドラマかなんかで、たまに「内務調査局員」みたいな人が出てきますが、「監査官」とはああいうような人のことです。
「インスペクター」は、その「監査官」のもっと規模がでかいバージョンで、日本の経済活動を公平に保つとかそういう名目で影響力のある企業に派遣され、そこで内務調査をしているのではないでしょうか?
もしそのような任務を負っているのなら、いろいろな会社を渡り歩くのは、各々の会社の内部調査をするためだと説明がつけられます。
つまり、梓澤が多数の会社を渡り歩いているのは、「インスペクター」の表向きの仕事が「監査官」であり、その仕事として各会社を渡り歩きながら内務調査をしているからなのではないでしょうか?
もしそうだとしたら、そのような「監査官」を派遣する親元である「ビフロスト」の「表の顔」とは何なのでしょうか?
Ⅴ. 「ラウンドロビン」=「パノプティコン」……?
ⅰ. 「ビフロスト」の表向きの顔
「インスペクター」の表向きの顔は以上で説明したように「監査官」のようなものだと考えられるのですが、では「ビフロスト」の表向きの顔は何でしょう?
結論から言うと、ビフロストは経済省管轄下の組織だと考えられます。
まず、以上の仮説に基づけば、ビフロストはインスペクターたちを派遣して、たくさんの会社の内務調査をさせているわけですが、それには当然理由がはずです。あるいは言い方を変えれば、たくさんの会社の内務調査をすることがビフロストの目的であり、利益につながることだとも言えます。
ではビフロストはたくさんの会社の内務調査をして何がしたいのでしょう?
ⅱ. 「経済活動を監視・記録することで犯罪を未然に防」ぐ
まず表向きには、ビフロストが内務調査をしているのは社会経済を公平に保つためだと説明できるでしょう。
ビフロストはそうすることで、特定の会社だけが利益を得たり、会社が不正をはたらきそうになったら注意することができます(「公正取引委員会」のようなもの、といえばわかりやすいでしょうか)。
とにかく、そのようにビフロストはインスペクターたちを派遣し、各会社の内務調査を行うことで、経済活動を監視・記録することで犯罪を未然に防ぎ、最適な生き方を導いているのです。
しかしこれはどこかで聞いたようなセリフですよね?
ⅱ. 「ビフロスト」=「パノプティコン」?
そう、上で考えたようなビフロストの役割は「パノプティコン」と全く同じです。
上の仮説では、ビフロストはインスペクターたちを各会社に派遣し、内務調査を行うことで、経済活動を監視・記録することでそこで行われる経済活動の公平性をたもっているのでした。
他方「パノプティコン」は、「市民の行動と経済活動を監視・記録することで犯罪を未然に防ぎ、最適な生き方を導く」制度と銘打たれ、シビュラシステムに代わる国民支援制度として提案されたものでした。
つまりビフロストが行っていることは、「パノプティコン」が機械だけで自動ではできなかったことを、インスペクターという生身の人間を使ってやっているだけなのです。
したがってこのことから、「ビフロスト」=「パノプティコン」、より正確には「ラウンドロビン」=「ビフロスト」という新たな仮説が生まれます。
長くなりそうなので、「ラウンドロビン」=「ビフロスト」という仮説については<後編>で考えていきたいと思います。
<後編>