これジャンプでやって大丈夫……?
飛び散る血飛沫、容赦ない斬殺、「胸ぇ揉んでみてえ」と言う主人公ーー。
これホントにジャンプで大丈夫? ってことを全部やっちゃう、それがこの漫画『チェンソーマン』です。
そんな『チェンソーマン』の作者は、あの『ファイアパンチ』の藤本タツキ先生。それを聞けば納得、という方も多いのではないでしょうか。『ファイアパンチ』と言えば、主人公が自らの腕を切るという衝撃的な1話が印象的ですから。
ただこの『チェンソーマン』、魅力はグロさだけではありません。パワーアップしたグロ描写はもちろんのこと、藤本先生オハコのシュールギャグ、コマ割りのテンポなど、ほかにも魅力は盛りだくさんです。
今回はそんな漫画『チェンソーマン』の伏線や謎について、それから漫画としてのうまさや登場人物の心情について考察していきたいと思います。目次はクリックして飛べるので、気になるところからどうぞ!
伏線・謎について
悪魔の強さ=「名前」のイメージの強さ


まずは1巻の伏線や謎について考察します。
最初は悪魔の名前についてです。画像(↑)でマキマが言うように、「すべての悪魔は名前を持って産まれてくる」。そして、「その名前が恐れられているものほど悪魔自身の力も増す」ということでした。
つまり端的に言えば、悪魔の強さ=「名前」のイメージの強さということになります。
これはめちゃくちゃうまいですよね。
この説明をした上で「デンジ君は『チェンソー』の悪魔になれる」なんて言っちゃうのはズルいです。
そして何よりこの設定でうまいのは、「名前」なんてものは数えきれないくらいあるという点です。
例えば、「刀」の悪魔とか、「戦車」の悪魔なんかが登場すれば一目で強いってわかりますし、もし「神」の悪魔とか、「悪魔」の悪魔とか出たらどうなっちゃうんだろう?!とわくわくがマシマシになります。
また、その「名前」の強さが人のイメージにもよるってところもポイントでしょう。
漠然と「その名前が恐れられているものほど悪魔自身の力も増す」とは言っても、それって誰が基準なんでしょう?
例えば、日本では恐れられててアメリカで恐れられてない「名前」の悪魔なら、日本では強くてもアメリカでは弱いの?とか、「あいつは恐れてるけど、俺は恐れてねーぜ!」とかデンジが言い出したら、デンジの恐れない名前の悪魔はデンジの前で無力なのか?とか、いろいろと想像を掻き立てられます。
これだけで色んな「名前」の悪魔を妄想できるし、これから出てくる悪魔の「名前」が楽しみです!
公安について
「公安」とは、一般に公共の安全を保つ何かしらの機関を指しますが、『チェンソーマン』の「公安」は、警察とも連携をとっていることなどから考えて、日本の公安警察のようなものだと考えられます。
その規模としては、「東京支部」が存在することや、1巻終盤でマキマが公安のお偉い方と話している場面から察するに、公安は国家公務員くらいの規模だと考えられます。
それに加え、「米国」、「ソ連」(ロシアじゃない!)というワードからしても『チェンソーマン』がけっこう世界規模の話になりそうだということが察せられます。
世界観の深さをにおわせるというのも、『チェンソーマン』のうまいところだと思います。
また、「公安」の中でもマキマが率いている「公安対魔特異4課」は「実験的な部隊」とのことでしたが、デンジや、パワーのような「魔人」が配属されることに鑑みると、けっこう危険な「実験」をしていることは予想できます。
悪魔を狩るだけなら人間のデビルハンターで十分なのでしょうから、公安としては「魔人」のようなより強力な力をその手中に収めたいのでしょう。
そこから推測できる利用法は、例えば悪魔の力の組織的利用、軍事的利用、より強力な悪魔への対抗措置などです。
「特異4課」がどのような思惑に巻き込まれていくのか、注目です。
悪魔について
先ほど悪魔の「名前」について話をしましたが、それよりも悪魔自体の方が謎です。
デビルハンターが一般的であろうことなどから見て、『チェンソーマン』の世界では普通に悪魔と人間とが何らかの形で共存しているのでしょうが、詳しいところは不明です。
いったいどうやって悪魔は生まれたのか?何か目的はあるのか?どんな種類がいるのか?もう少し本編が進まないと、ここら辺はわかりませんね。
ただデンジがポチタという悪魔と合体していることから考えて、おそらく人間と悪魔との間の単純な対立だけが描かれるのではないだろうことは予想できます。
物語と悪魔がどう関わっていくのか、これからの展開に期待です。
個人的名シーンベスト3
3位 : テンポの良いコマ割り!アキがデンジにキレるシーン
このシーン、めちゃくちゃ藤本先生っぽかったです。
『ファイアパンチ』でも、トガタがトラックの敵を倒すシーンなどで見られたのですが、四角いコマ割りで、テンポよく画面が切り替わっていく感じがすごく気持ち良いです。
アキの表情が次第に怒りでゆがみ、しかもアキのコマが占める大きさが大きくなっていく、これで十二分にアキの怒りが大きくなっていく様子がわかります。
その後の警察のカットインも見事です。アキの横顔がちょうど反転したような構図で、スムーズに次の展開につながるようになっています。
アニメとかだったらこのカットの切り替わりには絶対「ポッ」とか「ポン」とかちょっとした効果音がつくと思うんですけど、映像じゃないのにその効果音が漫画からも聞こえてくるみたいに感じられます。素晴らしいです。
2位 : 一瞬で心変わりするデンジ!パワーちゃん登場シーン


ここもすごくテンポ良かったです。
まず注目したいのは集中線の量。パワーちゃん登場からラストにかけて集中線がすごく密に書かれてますよね。これですごくスピード感が出てます。
そんでもってパワーちゃんの胸を見て、デンジが勢いよく「まあいいか‼ よろしくなあ!」と一瞬で改心。こんなスピード感ある改心見せられたら笑ってしまう。
で、ラストの駒が集中線のないアキの真顔。しかもこれがこの話のラストなので余計おもしろい。こういうギャグは本当に藤本先生お上手です。
1位 : 心に鳴り響くチェンソー!1巻ラストシーン



スターターハンドル(エンジンかけるひも)引いてから、チェンソーのエンジン全開にするまでの流れが完璧です。
そもそもスターターハンドルを体の外に垂らしておくっていうデザインが天才です。これでエンジンをかけるときに絶対「動き」が生まれるわけですから。
それに加えてうまいのはスターターハンドル引いてからエンジンかけるまでワンテンポ置くところです。
それまで勢いのあったアクションの合間にデンジの回想を挟むことで、この回想を読むときに読者の頭の中は無音になるはずです。しかも無音だからこそ内容も響いてきます。
そしてその直後にチェンソーが頭をぶち抜いて出てくる。そうすると自然にチェンソーの音も聞こえてくるわけです。
悪魔に握りつぶされる(音あり)→回想(無音)→チェンソー(音全開!)という流れが映像と音でもって頭の中で再生される、それがこのシーンのすごくうまいところです。
このシーンもそうなんですが、『チェンソーマン』のすごいところは最小限の効果音の描写で、ものすごい音量のチェンソー音が聞こえてくるところです。そういうところが、この漫画に爽快感をもたらしているんだと思います。
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おもしろいですよね、チェンソーマン。
まだ1巻ということで謎が多いですが、それでも十二分に楽しめる内容になっていると思います。
やっぱり何より「漫画がうまい」ので見てて飽きないです。
技巧的な側面はもちろんなのですが、物語が進むにつれてもちろん内容面でもおもしろくなるのではないかと期待しています。
2巻、3巻と引き続き記事は書いていきたいと思いますので、気が向いたらまた読んでいただければ嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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