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『ブルーピリオド』紹介 「ピカソの絵の良さがわかんない」ヤンキー、藝大を目指す

 

 

 『ブルーピリオド』(山口つばさ 著)紹介

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『ブルーピリオド①』より ©山口つばさ/講談社

「俺はピカソの絵の良さがわかんないから それが一番スゴイとされる美術のことは理解できない」

そんな一節から始まる漫画『ブルーピリオド』の主人公八虎(やとら)ヤンキー高校生。タバコをふかし、酒も飲む。ただし、どこか一途な彼は秀才で、成績優秀。

そんな主人公の八虎は、あることをきっかけに絵を描く悦びに目覚め、なんとあの美大の最高峰・藝大を目指すことにーー

 

「ピカソの絵の良さがわかんない」という経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。いったい絵の何がよいのか、どこがおもしろいのか……。

簡単だけれど難しいそんな問題に、美大の最高峰「藝大」出身の作者*1が、主人公の八虎と共に真摯に取り組む、そんな漫画がこの『ブルーピリオド』です。

今回はそんな『ブルーピリオド』を、3つの魅力とともに紹介します。ほんの少しだけネタバレを含むのですが、ご容赦ください。

それでは早速見ていきましょう!

 

 

魅力①等身大の主人公

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『ブルーピリオド①』より ©山口つばさ/講談社

1つ目の魅力は、「等身大の主人公」です。

DQNヤンキーという強烈な設定の主人公八虎(やとら)ですが、彼はいろんな人にとっての「等身大」になります。

まず「等身大」と言えるのは、八虎と同じように、あまり絵に馴染みのない人です。「ピカソの絵の良さがわかんない」、「お絵描きって趣味でいいんじゃないの?」 そういった疑問を抱いたことのある人も少なくないと思います。

そんな人にとって八虎は「等身大」になります。あんまり絵の良さがわからなかった八虎が、どうして絵に目覚めたのか、どうして藝大なんて目指そうと思ったのか……もしもあなたがあまり絵に馴染みがないのなら、きっと八虎と同じ視点で、よりリアルに物語を感じられるでしょう

 

またもちろん、絵に馴染みがある人、普段から絵を描く人にとっても、八虎は「等身大」になります。

絵に目覚めた八虎はやがて、絵を描く人なりの困難にぶつかることになります。絵がうまく描けなくて苦しんだり、才能のあるなしで葛藤したり、自分はどうして絵を描くのかと悩んだり……。

そんな八虎の姿は、絵を描く人にとって「等身大」に映るでしょう。

 

ほかにも、美大を受験したい人、これから絵を描きたい人、美術館の楽しみ方がわからない人……等々、多くの人にとって八虎は「等身大」になり得ます

いろんな人のリアルになる、それが『ブルーピリオド』の魅力の一つです。

 

魅力②絵の説得力

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『ブルーピリオド①』より ©山口つばさ/講談社

2つ目の魅力は、「絵の説得力」です。

『ブルーピリオド』の大きな特徴として、「本物の絵を漫画で使っていること」が挙げられます。例えば上の画像の石像デッサンでは、実際に書かれたデッサンがそのまま使われています

ほかにも、実際に藝大に合格した人の絵が試行錯誤の例として取り上げられていたり、ときには上手く描けなかったときの八虎の絵にも、本物の絵が使われていたりしています。

本物の絵だからこそ、それがどういう意図でつくられたのか、どういう迫力をもって伝わってくるのか、いろいろなことにリアルな説得力があります

中でも圧巻なのは、八虎の成長のターニングポイントとなる絵です。物語の鍵となる作品だけあって、やはり凄みがあります。これだけは、自分の目で実際に見てもらいたいです……!

もちろん、作中作だけでなく『ブルーピリオド』の絵自体も、藝大出身の作者なので絵のうまさは圧倒的です。どのページ、どのコマをとってみても一つ一つが芸術品です。そういう意味でも、『ブルーピリオド』の絵には圧倒的な説得力があります。

 

魅力③美術のおもしろさを味わえる

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『ブルーピリオド①』より ©山口つばさ/講談社

3つ目にして最大の魅力が、「美術のおもしろさを味わえる」という点です。

例えば、少しネタバレになりますが、八虎が絵に目覚めるきっかけとなった1巻冒頭のエピソードなどは印象的です。

美術の授業で「私の好きな風景」を描くことになった八虎は、自身の身の上に悩みながら、最終的に早朝の渋谷の風景を描くことになります。

美術部の先輩に助言を受け、感じたままに、懸命に絵を描く八虎。そしてそれを見た友人が一言。「もしかして早朝か?これ」

 

まさに、美術は文字じゃない言語、それを象徴する場面になっています。「等身大」の八虎と一緒にページをめくっていると、彼の感動が生で伝わってきます

それでもこれはまだほんの始まりに過ぎません。巻を進めるごとに、先輩や友人のユカ、美術部の先生や予備校仲間、いろんな縁と結ばれた八虎は、そのときどきで異なった「美術のおもしろさ」を味わうことになります。

八虎が、技術面でも精神面でも成長していくにつれて、技術面での「美術のおもしろさ」、精神面の「美術のおもしろさ」も増していきます。そのように、いろいろな「美術のおもしろさ」を味わえるのが『ブルーピリオド』の醍醐味だと言えるでしょう

 

 

漫画でしか伝わらない漫画

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『ブルーピリオド①』より ©山口つばさ/講談社

「絵でしか伝わらないこと」って、私はあると思います。まさに美術は「文字じゃない言語」だと思います。

『ブルーピリオド』はそれを体現している漫画、もっと言うと、「漫画でしか伝わらない」ことをやっている漫画だと思います。

漫画でしか伝わらない漫画『ブルーピリオド』を、ぜひ漫画で味わっていただきたいです!

 

今回は『ブルーピリオド』の紹介ということで3つの魅力を紹介しましたが、まだまだ全然魅力を伝えきれていません

逆に言うと、だからこそ『ブルーピリオド』は「漫画でしか伝わらない漫画」だと言えるのかもしれません。私がこうして文字だけで『ブルーピリオド』の魅力を伝えようとすると、その時点でいくらか『ブルーピリオド』の魅力は死んでしまっているわけですから。

 

今回特に伝えきれなかったのは、個性的な登場人物たちです。引き込まれるような絵を描く先輩に、苦悩する八虎を導く佐伯先生、女装男子のユカ、おさげの橋田、天才世田介……その一人一人のキャラも一級の芸術です。

また、八虎の秀才っぷりは見ていて心地よいですし、時折織り交ぜられる美術理論も興味深いです。あるいは絵だけでなく、八虎とユカ、八虎と世田介などの人間模様も見どころです。本当に言葉では語り切れない魅力をそなえた漫画だと思います。

 

試し読みとインタビュー、最新情報(Kindle版で1巻まるまる無料!、2019/2/22 4巻発売!)

最後になりましたが、ネットで見られる『ブルーピリオド』の試し読みインタビューについてお知らせしたいと思います。

<無料試し読み>

afternoon.moae.jp

現時点(2018/10/27)ではこのアフタヌーンの公式サイトが無料で一番長く読めます。1話まるごと無料です。

<インタビュー>

manga.torico-corp.com

best-times.jp

bugmag.xyzネットで見られるインタビュー記事はけっこう多いです。見落としもあるかもしれませんが、とりあえず上に挙げた記事は見つけられました。

<最新情報>

1巻まるまる無料!
ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

 

現在(2019/2/22)『ブルーピリオド』Kindle版が1巻まるまる無料で読めます!ぜひ!

 

最新4巻発売!


ブルーピリオド(4) (アフタヌーンコミックス)

 

今後も目が離せない……!


ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

今回は『ブルーピリオド』について紹介しました。いかがでしたでしょうか。

現在(2019/2/22)4巻まで刊行中の『ブルーピリオド』、4巻ではいよいよ八虎が藝大受験に挑みます!これからの展開も目が離せません……!

 

絵とは何か、美術とは何か、そんな根源的な問が詰まった物語です。芸術に対する価値評価が、一方では低くなり、他方では見直されつつある今、多くの方に読んでいただきたい作品です。

買おうかどうか迷う、という方はまずは試し読みからでも、読んでみてはいかがでしょうか。きっと八虎があなたを彼の見る絵の世界に誘ってくれると思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました! 


ブルーピリオド(2) (アフタヌーンコミックス)

*1:『ブルーピリオド』3巻の帯「美大出最高の難易度を誇る藝大に現役合格した作者がリアルに描くスポ根系、美大受験漫画‼」より