「女王蜂」のごとき個体
「女王蜂のごとき個体」とはどういうことでしょうか?
第19話にて、叫竜の姫( = "001" )はそのように「女王蜂のごとき個体」と呼ばれたわけですが、いったい何が「女王蜂のごとき」なのでしょう?
つまり、叫竜の姫を「女王蜂」にたとえているからには、叫竜の姫に何か現実の女王蜂と同じような特徴があるということではないでしょうか?
そこで今回は、叫竜の姫がどのような点で「女王蜂」のようであるのか、あるいは叫竜の姫が「女王蜂」ならばどんなことが言えるのかを考察したいと思います。
「女王」としての役割
女王蜂が「女王」でありうる最大の要因は、巣の中で唯一、女王蜂だけが卵を産むことにあると言えます。*1
蜂社会を形成するのは主に働き蜂(メス)、オス蜂、女王蜂の3種類ですが、それらのうち卵を産めるのは女王蜂だけです。
つまり、巣の中で生まれた蜂はすべて女王蜂の子供だと言えるわけですが、この蜂の特殊な生態には「半倍数性」という特別な性決定のシステムが関係しています。
半倍数性
「半倍数性」とは何か、まずはミツバチの場合の具体例を引用したいと思います。
雄のミツバチの遺伝子は母親である女王バチに完全に由来する。女王バチの染色体は32本、雄バチの染色体は16本である。雄バチの遺伝子は次代の雄に伝わらず、従って雄バチには父がなく、雄の子もない。雌である働きバチの遺伝子は半分が母親に、半分が父親に由来する。このため、女王バチが単一の雄と交配した場合、生まれる働きバチから抽出した任意の2個体は平均3/4量の遺伝子を共有する。二倍体である女王バチのゲノムは染色体の乗換えの後に卵細胞に分配されるが、父親のゲノムは変化せずに受け継がれる。従って雄バチの産生する精子は遺伝的に同一である。*2
つまり、簡単に言えば「半倍数性」とは、染色体の数でオスかメスが決まりますよ、というシステムなのです。
例えばミツバチでは、上図のように、染色体が4本ならばオスに、染色体が8本ならばメスになります。
これはつまり、オスには父親がいないということを意味しています。
すなわち、女王蜂とオス蜂の両方の染色体を有した受精卵だけがメスになり、女王蜂だけの染色体を有した無精卵はオスになるのです。
ただしここで重要なのは、結局巣の中のすべての蜂たちは「女王蜂」の遺伝子を受け継いでいるということです。
この点はあとで言及するので覚えておいていただきたいです。
また、蜂は以上のような「半倍数性」というシステムを有しているため、それだけで性別が決定するという「性染色体」をもっていません。
この点も注目すべき点と言えそうです。
ではこのような生態をもった蜂、そして「女王蜂」は、叫竜やその姫とどのような関係をもっているのでしょうか?
叫竜はみんな叫竜の姫から生まれた?
まず言えそうなのは、叫竜はみんな叫竜の姫から生まれたのではないかということです。
叫竜の姫を「女王蜂のごとき個体」と呼ぶ理由もここにあるのではないでしょうか。
前述したように、女王蜂という個体が「女王」たる最大の要因は、女王蜂だけが卵を産める点にあります。
叫竜の姫を観察した "APE" か、あるいはそれに準ずる機関(個人)は、叫竜の姫そのものやその周りの生態を見て「女王蜂のごとき個体がいる」と判断したのでしょうが、それではどうしてそう判断したのか?ということが問題になります。
もし「女王」だけならただ社会の中で独り君臨する様子だけを見てそう名付けるのも筋は通るのですが、「女王 "蜂" 」とするからには、なにか "蜂" でなければならない理由があるはずです。
そうなるとやはり、叫竜の姫からほかの叫竜たちも生まれているから叫竜の姫を「女王蜂のごとき個体」と呼ぶことにした、というシナリオが一番筋が通るような気がします。
もちろん、現実で「女王蜂」が複数いるように、『ダリフラ』の世界においても「女王蜂」が複数いる可能性もありますが、"001" が長きにわたって女王として君臨しているであろう様子を見ると、作中のほとんどの叫竜は叫竜の姫から生まれたと考えてよいのではないかと思われます。
ただ、そうだとすると気になるのが叫竜から発見された XX染色体の存在です。
結局叫竜は、人間から生まれた?
「半倍数性」と矛盾する?
もし叫竜の姫が「女王蜂」と同様に、ほかの叫竜たちを生み出しているとしたなら、叫竜は現実の蜂のように「半倍数性」というシステムで繁殖しているということになるのか?というと、そう単純でもなさそうです。
なぜなら叫竜からは、「半倍数性」というシステムには不要であるはずの "XX" という一対の性染色体が見つかったからです。
ただ、それならば「半倍数性」は全く関係ないのかというと、そういうわけでもありません。
なぜなら、「女王蜂」たる叫竜の姫が単独でほかのあれだけの数の叫竜たちを生み出しているとしたら、その繁殖力を見る限り、何か特別な繁殖のシステムを必要とするからです。
またメタ的な視点にたってみても、せっかく蜂にたとえた叫竜に、蜂の生態系を全く無視した繁殖システムを与えるとは考えづらいです。
「半倍数性」を応用したシステム?
「半倍数性」を利用し、かつX染色体も組み込むようなシステムを考えることはできます。
「半倍数性」でも、染色体の数が性別を決めるとはいえ、結局のところ染色体そのものは親から子に遺伝します。
したがって、例えば性別を決定するのは染色体の数でありながらも、X染色体が親から子へ単純に遺伝している、ということは考えられます。
もし叫竜がそのようなシステムをとっていたなら、叫竜から見つかったという"XX" という一対の染色体も、もとをたどれば「女王蜂」である叫竜の姫から遺伝したことになります。
しかしそうだとしても、結局そのXX染色体はどこから来たのでしょうか?
XXは人間由来?
X染色体というのは、人間だけでなく、他の多くの哺乳類にも見られる染色体です。
ただし、叫竜の場合、結局そのX染色体は人間に由来するのではないかと推測することができます。
そう考える最大の理由は、叫竜の姫の見た目が人間の容姿に非常に似通っていることにあります。
外見だけで考えるのならば、明らかに叫竜の姫は人間の女性に似通っていますし、叫竜としての要素は8本の触手と角くらいで、むしろ人間に近い生き物のように見えます。
そのような見た目に鑑みれば、やはり "XX" という女性が有する一対の性染色体も、元をたどれば人間からもたらされたものではないかと考えることができます。
また、メタ的視点から見ても、「哺乳類のメスも持つ」でもいいところをわざわざ「女性が持つ染色体」とセリフに付け加えるのも意図的なように思えます。
ただもしそうだとしてもまた新たに疑問がわいてきます。
叫竜と人間
もし叫竜の "XX" が人間由来だとして、それなら一番最初の叫竜はどこから生まれたのだ?という疑問がわいてきます。
結局のところ、叫竜は本当に天然の生物なのか、人工の生物なのかよくわからないということになってしまいます。
ただ、もし叫竜の "XX" が人間由来だとしたら、それは人間と叫竜との密接な関係を意味します。
例えば、なぜ "APE" は叫竜の姫の居場所をつきとめられたのでしょう?
得体の知れない科学技術でつきとめた、としてもいいのかもしれませんが、より説得力があるのは "APE" に叫竜側の人物が存在するという仮説です。
これは単なる妄想ですが、七賢人の首席や副主席の仮面の下は、叫竜の姫のような真っ青な肌だったとしたら、叫竜の仲間であった主席や副主席が叫竜の姫の居場所を知っていてもおかしくはないと考えられます。
以上は妄想にすぎないのですが、APEについてはやはりどうにも腑に落ちない点が多いです。
彼らはどうやってマグマエネルギーを発見したのでしょう?そしてマグマエネルギーは本当に「クリーンかつ万能なエネルギー源」なのでしょうか?あるいは叫竜のコアの中身は本当に人間なのでしょうか?
まだいくらでも疑問がわいてきそうです。
蜂は花から蜜を吸う
今回は「女王蜂」と叫竜について、特にその繁殖のシステムに注目して考察しました。
まとめると今回は、叫竜の姫が「女王蜂」ならば、叫竜は叫竜の姫から生まれているであろうこと、叫竜から見つかった "XX" は元をたどれば叫竜の姫から、そしてさらに元をたどれば人間から遺伝したのではないかということを考察しました。
書きそびれたのですが、叫竜に "XX" という女性の染色体があるのならば、パパ―天上―父と叫竜―地下―母という対比もできますね。
ただ叫竜が "XX" を有しているということからはやはり多くの疑問が生まれます。
叫竜を蜂にたとえるというメタファーもまだ多くの意味を持っていそうです。
例えば、蜂は花から蜜を吸うわけですが、叫竜(蜂)はフランクス(花)からマグマエネルギー(蜜)を吸うでしょうか?
あるいは「蜜」とは、あの叫竜のコアの中に入っていた「人間らしきもの」を意味しているのでしょうか?
そのあたりについても考察できたら良いなと思います。
特番を乗り越えて今週は本編がまた進みそうです。
ガチムチフランクスレスリングが見たい。
今回もお読みいただきありがとうございました!
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<ダリフラ考察まとめはこちら↓>
*1:女王蜂がいる巣の中では基本的に女王蜂だけが卵を産むことになるが、女王蜂が死んだ場合、メスである働き蜂が無精卵を産む種も存在する。
*2:半倍数性 - Wikipediaより引用