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ダリフラ本編考察⑱「世界樹ユグドラシル」~地上の層~

「世界樹ユグドラシル」~地上の層~

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第15話「比翼の鳥」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

前回は「北欧神話」と『ダリフラ』の関係のうち、「ユグドラシル」と『ダリフラ』の関係、そのうち特に「天上の層」と『ダリフラ』との関係を考察しました。

 

今回は「ユグドラシル」の「地上の層」と『ダリフラ』との関係について考察したいと思います。

 

 

地上の層

「地上の層」とはどのような場所か

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Midgard

ユグドラシルの中間層に位置する「地上の層」には、まずその中心に人間が、そしてその周りには巨人小人黒い妖精などが住んでいると言われています。

 

北欧神話の用語で言えば、人間が住む領域がミズガルズ、巨人の住む領域がヨトゥンヘイム、小人が住む領域がニダヴェリール、黒い妖精が住む領域がスヴァルトアールヴヘイムということになります。*1

 

それではこのような「地上の層」はどのように『ダリフラ』と関連しているのでしょう?

 

以下では「地上の層」と『ダリフラ』との関連を考えていきます。

 

ミズガルズ=プランテーション内部都市

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第3話「戦う人形」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

まず、ミズガルズ=プランテーション内部都市と見立てられるのではないかと考えられます。

その理由としてはまず、プランテーション内部都市が「天上の層」である「ミストルティン」と「地下の層」*2との間に挟まれているという構造が挙げられます。

 

そして、ミズガルズが人間の住む領域であるように、プランテーション内部都市もオトナの住む領域であるということも理由になり得ると考えられます。

 

またこれは弱い根拠ですが、内部都市と「天上の層」と見立てられる「ミストルティン」とを結ぶエレベーターが、ミズガルズ「天上の層」に位置するアースガルズ(神々の住む領域)をつなぐビフレスト(=虹の橋)に見立てられなくもありません。(ミズガルズ―ビフレスト―アースガルズ ∽ 内部都市―エレベーター―ミストルティン)

 

以上のように、プランテーション内部都市は、その構造などからミズガルズに見立てられると考えられます。

 

そしてこのミズガルズの外側にあるのが、巨人の住む世界「ヨトゥンヘイム」です。

 

巨人=フランクス / 叫竜

丘の巨人=フランクス

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第2話「繋がるということ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

ミズガルズの外側に巨人が住んでいるのなら、プランテーション内部都市の外側にも当然巨人に値する何かが住んでいると考えられます。

そこでまず考えられるのが、巨人=フランクスではないかということです。

 

そう考えるのはまず単純に、フランクスも巨人族と同様に人間よりも大きく、また超人的な力を発揮するからです

 

また巨人ミズガルズの外部に住んでいる図式と同様に、フランクスプランテーションの外部で叫竜と戦います。 

 

以上のようなフランクスと巨人との特徴の類似や、フランクスがプランテーション外部で活動する構図と巨人がミズガルズの外部で活動する構図が一致するため、フランクス=巨人と考えることができそうです。

 

しかしながら、北欧神話で「ヨトゥンヘイム」に住む巨人が「霜の巨人族」「丘の巨人族」の2種族であるように、『ダリフラ』でも巨人は2種族存在すると考えられます

 

霜の巨人=叫竜

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第1話「独りとヒトリ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

フランクス同様、人間よりも巨大で超人的な力をふるっており、またプランテーションの外部に存在するのが叫竜です。

したがって叫竜も、フランクスと同様に巨人に見立てられるのではないかと考えられます。

 

そして叫竜パパ(七賢人)という『ダリフラ』世界におけるに当たる存在*3と対立していることをふまえると、叫竜は巨人の中でも特に北欧神話において神に対立する「霜の巨人」に見立てられるのではないかと考えられます。

 

叫竜がもし霜の巨人と見立てられるのならば、ラグナロク(世界の終末)で霜の巨人アースガルド(神々の住む領域)に攻め込んだとされるように、やはり最後までパパたちと戦う運命にあるのかもしれません

 

しかしながら、北欧神話における霜の巨人は日ごろから神族と対立しながらも交流し、中には結婚までするものもいました。

 

このことを踏まえると、『ダリフラ』で「霜の巨人」とみなせる叫竜も、「神族」に当たるパパたちと、友好的な関係を結ぶ(結んでいた)ということも考えられます。

 

神族と霜の巨人↔パパたちと叫竜

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第17話「楽園」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

パパたちと叫竜ははじめから対立関係にあったのでしょうか?

 

例えば第17話において、七賢人のセリフから叫竜と人類とは100年にわたって対立していることが明らかになりましたが、昔からずっと叫竜と人類はずっと対立していたのでしょうか?

 

そもそもなぜ対立しているのかと言えば、叫竜がマグマエネルギーにたかる点などを考慮するとやはりマグマエネルギーが対立の一因となっていると考えられるのですが、叫竜と人類の間で話し合いがもたれることはなかったのでしょうか?

 

もちろん話し合いによって解決しなかった、もしくはそもそも話し合いなど成立しなかったから武力衝突のような形になっているのかもしれませんが、ゼロツーという叫竜と人類との混血の存在や、フランクスの構造と叫竜の構造に類似点が見られることなどを考えると、人類と叫竜の関係は一方的な関係ではない、相互作用的なものと考えられます。

 

"叫竜" の姫に "コード" があるということ

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第17話「楽園」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

また17話のEDクレジットで明らかになったように、叫竜の姫 "001" というコドモに与えられるはずのコードが割り振られていることや、そもそも叫竜の姫が人間のような四肢を有していることも、人類と叫竜の関係の複雑さを物語っているように思えます。

 

人類と叫竜との関係はこれから明らかになっていくのでしょうが、叫竜が霜の巨人に見立てられるのだとしたら、霜の巨人神族と関係をもったように、あるいは叫竜もパパたちと何らかの友好的な関係をもっていたと推測できなくもありません

 

例えば、"001" やゼロツーのような存在がなぜ生まれたのかと言えば、もちろんそれは人類か叫竜かによる一方的な実験の産物なのかもしれませんが、もしかしたらもっと和平的な、人類と叫竜の友好の証となるような交渉の産物だった可能性も考えられなくはありません

 

「シングル」と「ダブル」というモチーフ

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opより ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

さらに、フランクスと叫竜巨人族という単一のイメージにまとめると、両者の関係がより明確になってきます。

 

例えばそれらの関係性を探る観点として、「シングル」と「ダブル」という観点が考えられます。

 

すなわちこの観点から見ると、叫竜は「シングル」のモチーフでまとめられ、人類は「ダブル」のモチーフでまとめられるのです。

 

例えば、先ほど言及した001=叫竜の姫1本の角を有しているのですが、それに対してゼロツー2本の角を有しています。

 

つまり、あくまで "叫竜" の姫であり叫竜側である "001" には「シングル」のモチーフである1本の角が、人間にあこがれ人間として生きようとしているゼロツーには「ダブル」のモチーフである2本の角が生えているのです。

 

この「シングル」と「ダブル」のモチーフは、他にも例えばフランクスのスタンビートモードでもあてはめられます。

 

すなわち、操縦者が1人という「シングル」になったときのみフランクスはスタンビートモードという叫竜の姿に変形し、2人という「ダブル」のときには人型のフランクスになるのです。

 

 

また、新しいOP映像では上に貼った画像のカットで "001" の後ろにフランクスらしき何かが映っているのですが、これも1本の角をもっているように見えます。

 

このフランクスらしきものが何なのかわかりませんが、もし「シングル」と「ダブル」のモチーフが「叫竜」と「人類」を指し示すのならば、このフランクスのような何かは「叫竜側」に加担する何かなのかもしれません。

 

 

そして後編へ……(1週間ぶり2度目)

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第17話「楽園」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

次回は後編と言ったな、あれは嘘だ……。

 

ごめんなさい今日で終わると思っていたのですが、「地下の層」についてはまた来週記事にすることになりそうです……。

 

そもそもタイトルに「ユグドラシル」と書きながら、内実はかなり「ユグドラシル」からずれる内容、北欧神話の世界観全体に関しての内容になってしまいました。

 

一応ユグドラシルの3層を軸に語りだしているのでご容赦願いたいです……。

 

次回はユグドラシルの「地下の層」を中心に考察していきたいと思います。

 

特に、今回も言及した叫竜の姫=001については、半身赤で半身青であるヘルであるとか、あるいは8本の叫竜の触手のようなものをはやしているから8本脚の馬スレイプニルなどと考えられます。

 

また、グランクレバスが「ギンヌンガガプ」である可能性や「フリングホルニ」が死者を乗せることなどを改めて考えられればなと思っています。

 

前々回あたりから「北欧神話」について考察していますが、やはり必ずしも、『ダリフラ』が「北欧神話」をなぞっているわけではありません。

 

当たり前のことですが、『ダリフラ』は「北欧神話」ではありません。

 

ただし本編で北欧神話の用語が登場したように、『ダリフラ』の物語形成に北欧神話が関与していると考えられるため、この関連を検証してみようというのが私の試みだと考えていただけますと幸いです。

 

物語も終盤に差し掛かり、いよいよ世界観の謎も明らかになっていくことと思います。

 

これからの展開もより一層楽しみです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回お会いしましょう。

 

<次↓>

<ダリフラ考察まとめはこちら↓>

*1:ただし、小人と妖精は「ドワーフ」として同一視されることもある。

*2:「地下の層」については後述

*3:詳細はダリフラ本編考察⑨「神」を射抜くコドモたち<後編> - zaikakotoo’s diary参照