この記事は<後編>です。<前編>はこちら↓
<細菌>の病因論<後編>
<前編>では、「<細菌>は叫竜の常在菌である」という仮説とその仮説を立てた理由を述べました。
<後編>ではこの仮説をもとに、『ダリフラ』の様々な謎、ヒロが第1話でストレリチアに乗れた理由やヒロの青い心臓の理由、ゼロツーの犬歯が伸びた理由の解明を試みたいと思います。
なお<後編>の考察に関しては、以前考察である「ダリフラ本編考察⑥『黄』色いマグマ」、「ダリフラ本編考察⑦『血管』を走る運命」と関連が強いので、こちらも併せて読んでいただくとより得心いくことと思います。(この記事単体でも十分納得していただけるように配慮したつもりではあります。)
キスによる<細菌>の多量感染とヒロの黄血球増殖誘導
ずっと謎だったことがあります。
第1話において、なぜヒロは意識を失ったまま、それも今まで操縦できなかったのに急にストレリチアを操縦することができたのでしょう?
もちろんそれはキスをしたからなのでしょうが、なぜキスをすると急に、しかも意識を失ったままフランクスを操縦できるようになるのでしょう?
その答えが、<細菌>にあると考えられます。
ゼロツーも<細菌>を持っている
コドモたちが<細菌>保持者であるからには、同様にCODEを有するゼロツーも<細菌>を持っていると考えられます。
ただし「<細菌>は叫竜の常在菌である」という仮説に基づけば、「叫竜の血を引く」ゼロツーはとりわけ多くの<細菌>を有していると考えられます。
そこで考えられるのが、ゼロツーはヒロとキスをする際に多くの<細菌>をうつしたのではないかということです。
<細菌>は接触感染・経口感染する


そもそも<細菌>は接触感染・経口感染すると考えられます。
第10話ではゾロメの握手がオトナから拒まれていましたし、オトナの女性は霧吹きのようなもので部屋の<細菌>を殺菌していました。
これらのことは<細菌>が接触感染・経口感染することの証拠と言えるのではないでしょうか。
そもそも<細菌>保持者であるコドモがオトナの住居に入ってはいけないとされていることからも、この<細菌>の感染力はそれなりに強いだろうことがうかがえます。
したがって、キスという直接粘膜と粘膜が接触する、あるいは唾液を直接飲ませられるような行為ならば確実に<細菌>をうつすことができると考えられます。
したがって、ゼロツーはヒロとキスをした際に、もともと感染しているよりも多くの菌をヒロにうつしたと考えることができます。
<細菌>が体内に入ると免疫のもとである抗体が生じる
通常、私たち人間の体の中に細菌やウイルスが侵入すると、その細菌やウイルスを排除しようと抗体が生じてきます。
<細菌>も細菌であるからには、体内に入ると抗体を生じさせると考えられます。
このときに、特にコドモの体内で抗体として働くのが黄血球なのではないでしょうか。
抗原=<細菌>、抗体=黄血球
黄血球が<細菌>の抗体なのではないかということは前回の考察でも述べました。
オトナの女性とヒロの心臓という罹患部の一致と、オトナの女性が黄色い外付けの「心臓」を交換したタイミング、そしてちぐはぐな身体の老化や「永遠」の街という言葉から、オトナの女性は<細菌>に対して黄血球という抗体を外部から流すことで対応しているのではないかと考察したのでした。
この「黄血球が<細菌>の抗体である」という考察が正しいならば、ゼロツーがキスをしてヒロに<細菌>を多量にうつしたと考えることは、ヒロがストレリチアを操縦する上で非常に理にかなっていると考えられるのです。
<細菌>を多量に移すことで黄血球を誘導した
第11話ではミツルが「エリキシルインジェクション」という「高濃度の黄血球増殖誘導剤」の注射をしていたことが明らかになりましたが、ゼロツーはキスをすることで人工的にこれと同じようなことをしたのではないでしょうか。
つまり、ゼロツーのキスには現実のワクチンのような効果があったのではないかと考えられるのです。
周知のとおり、ワクチンというものの多くは、弱体化させた細菌ないしはウイルスを意図的に体に注射することで体内にその細菌ないしウイルスの抗体を誘導し、病気を予防するものです。
つまり<細菌>を注入すれば、それに対する抗体である黄血球の増殖が一時的に誘導されると考えられるのです。
黄血球の増殖=フランクスの操作性向上
先日公式HPのキーワード欄に「黄血球」が追加され、「黄血球」とは「コドモたちの血液中に含まれる成分で、パラサイトとしてフランクスとコネクトすることを
可能にしている化学物質。」であることが明らかになりました。
さらにエリキシルインジェクションを受けると、フランクスの操作性が向上するであろうことが第11話でも語られていました。
つまり、黄血球が増えれば増えるほど、フランクスをうまく操作できると考えられるのです。
ヒロが無意識下で急にストレリチアを操縦できた理由がここにあります。
つまり、ヒロはゼロツーとのキスにより<細菌>を多量うつされ、免疫反応として抗体である黄血球が多量に増殖することで、フランクスとのコネクトが可能になってストレリチアを操縦できたと考えられるのです。
以上のように考えれば、不可解だった第1話のヒロによるストレリチア操縦の謎にも説明がつきますし、さらにヒロの心臓の青の理由の説明にもつながります。
ヒロの心臓の青の理由
もう1つ、ずっと謎だったことがあります。
それはヒロの心臓の青の謎です。
そもそも「ポジティブパルス/ネガティブパルス」という間接的な意識のつながりしかないはずのフランクスを介することで、なぜヒロの心臓に物理的に青い心臓という疾患ができるのか不思議でたまりませんでした。
しかしこれがゼロツーとキスをして直接<細菌>を受け取った結果だと考えれば納得がいきます。
つまりヒロの心臓の青は、<細菌>が多量に増えた結果できたいわば炎症のようなものだと考えられるのです。
黄血球増殖誘導は一時的なもの
ただ話はそう単純ではないはずです。
第5話で<細菌>によってヒロの心臓が青くなったのならば、第1話で誘導された黄血球は<細菌>の増殖に追いつけず、十分な免疫効果を得られなかったために青くなってしまったはずなのです。
また、黄血球の増殖が一端おさまったであろうことが第2話でイチゴとフランクスに乗ることに失敗していることからもうかがえます。
これらのことから、おそらく第1話の黄血球ならびに<細菌>の増殖は一時的なもで、すぐにもとに戻ってしまったのだと思われます。
ではなぜ<細菌>に負けて心臓が青くなったのか?
ではなぜヒロの心臓は<細菌>に負けて青くなってしまったのでしょう。
それはやはりゼロツーと繰り返しストレリチアに乗ったからだと考えられます。
1回目にストレリチアに同乗した後、第3話で受けていた検査では「異常がなかった」と語られていましたし、ヒロの心臓が青くなったのも2回目にゼロツーと乗った後の話でした。
<前編>では「ポジティブパルス/ネガティブパルス」が<細菌>の発する電波のような何かと関係するのではないかということを述べましたが、やはり<細菌>をより多く有するゼロツーのネガティブパルスには<細菌>を増殖させるような効果があるのだと考えられます。
またそれが正しいならば、黄血球は<細菌>の抗体であるわけですから、ヒロの黄血球数の異常な増加も、そのようなゼロツーのネガティブパルスによる<細菌>数の増加に誘発された事態だと考えることができるでしょう。
以上のことから、「<細菌>は叫竜の常在菌である」ならば、ヒロの心臓の青も<細菌>によって起こったものだと説明することができます。
そしてこのヒロの心臓の青が<細菌>によるものだとすると、ゼロツーの犬歯が伸びてきている理由の説明もつきそうなのです。
ゼロツーの犬歯が伸びた理由
<細菌>が叫竜の常在菌であり、その<細菌>によりヒロの心臓が叫竜の血と同じ「青」になったのならば、<細菌>には人間の体を叫竜化させる作用があると考えることができます。
そしてそう考えればゼロツーの犬歯が伸びたのも、<細菌>が増殖することにより、叫竜化が進行した結果だと言うことができます。
ただし、一口に「叫竜化」と言うのは簡単なのですが、これには慎重にならなければなりません。
コドモも<細菌>が増殖すれば叫竜になる?
例えば、コドモも<細菌>保持者であるわけですが、ではコドモも<細菌>が増殖すれば叫竜になるのか?という疑問も当然生まれます。
これに関しては何とも言い難いです。
まず叫竜ほど巨大な肉体になれるのか?という疑問があります。
叫竜自体不可解すぎる生き物なのでなりますと言われればそれまでなのですが、かなり苦しい成長だと思われます。
また、もしコドモが<細菌>で叫竜になるのならば、どうしても大元が必要になります。
細菌が次々に感染して叫竜が生まれたとして、では最初の叫竜はどうやって叫竜になったのでしょう?
そこにはどうしても自然物としてのファースト叫竜が必要になります。
(また、あまり言いたくはないのですが、そのような設定はどうしても他の作品の設定と似通ってしまうということがあります。
記憶に新しいところでは某魔法少女アニメがそのような設定でしたし、そのへんは批判を買わないように制作側も配慮しているのではないでしょうか……。)
ともかく、この話はいったん置いておきたいと思います。
ただ<細菌>が叫竜化を進行させるのならば、いろいろなことが言えそうであるというのは間違いありません。
<細菌>の病因論
今回は「<細菌>は叫竜の常在菌である」という仮説に基づき、ヒロが第1話でストレリチアに乗れた理由やヒロの心臓の青の理由、ゼロツーの犬歯が伸びた理由を考察しました。
<細菌>が叫竜の常在菌であると考えれば、一応、『ダリフラ』の様々な謎に一貫性のある説明をもたせることができたのではないかと思います。
ただ、以前にも言った通り、『ダリフラ』というフィクションにどこまで現実の科学的な理論が通用するのかということは非常に難しい問題です。
今回の考察に基づけば、タイトルに含まれる「キス」もかなり現実というか、ロマンがない(筆者としてはそれもおもしろいとおもいますが)意味をもつことになります。
ただやはり『ダリフラ』では精神面がかなり重要視されているということを忘れてはいけません。
思春期を題材にしていることもその査証と言えますし、ヒロやゼロツーをはじめとする登場人物たちの心ある行動は作中ではイレギュラーとして扱われています。
そのような精神の面をこれから物語にどう関わってくるのか、筆者も楽しみに見たいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
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