こちらは<後編>ですので、↓<前編>↓ からお読みいただけると幸いです。
- 「割れた鏡」
- 「叫竜性」の否定
- ゼロツーは「人間」を夢見るか?
- 「ゼロツーの願い」とは何か
- 「ボクはもっと叫竜を倒さなければいけないんだ」
- ゼロツー出生の謎
- 「レーマン級」=ヒト型?
- 「鏡」に映ったゼロツーは人間を夢見るか?
「割れた鏡」
上の画像のように、OPには「割れた鏡」が登場します。
これはどのようなことを意味しているのでしょうか。
まず目につくのは、鏡に大きく映ったゼロツーの緑色の目です。
これはゼロツーが化け物、ひいては叫竜の血をひいていることの象徴だと考えられます。
緑色、だけならばヒロの目もそうなのですが、第5話で角に呼応するように目が赤く光っていたことや、第6話でも目が血走っていたことなどからこの目はゼロツー特有のものであると考えられます。
また、OPでも「割れた鏡」の次のカットやその次のカットでは「角」や「鬼の子と樹」といった叫竜にまつわると考えられるモチーフが差し挟まれています。
それではこのような叫竜の象徴である「緑色の目」が映った「鏡」が割れるとはどういうことなのでしょうか?
「叫竜性」の否定
まず単純に考えられるのは「叫竜性」の否定という意味です。
叫竜の象徴である「緑色の目」が映った「鏡」が "割れる" のですから、それはゼロツーがもっている叫竜の側面の否定を意味しているのではないかというのが素直な解釈です。
もちろんここでとどまってもよいのですが、もう一歩先へ進むのならば、「叫竜性」の否定はどのようなことを意味するのかということまで考えてもおもしろいでしょう。
ゼロツーは「人間」を夢見るか?
「叫竜性」の否定とは何を意味するのか、まず考えられるのは「叫竜性」の否定した末に、完全な「人間性」が待っているのではないかということです。
ゼロツーがどうやら「人間」に憧れているらしいというのは本編の諸所の場面で見られます。
顕著だったのは第8話で、屋上で洗濯物をヒロにふっかけた後、「人間のケンカっていうものをやってみたかったんだ」と言うゼロツーは続けて「今のボク、少しは人間に見えるかな?」と人間への憧憬を口にします。
ゼロツーが「人間」に憧れられるのは、もちろん彼女が「人間」ではないからであって、ゼロツーが完全な「人間」になるためには、当然彼女の中の「叫竜性」が否定されなければなりません。
したがって、「叫竜性」の否定は完全な「人間性」の獲得へとつながっていると見ることもできます。
そしてこのように考えると、「ゼロツーの願い」とは何かということも見えてきます。
「ゼロツーの願い」とは何か
またゼロツーが「人間」に憧れているということは「ゼロツーの願い」にも関連していると考えられます。
第6話終盤で、フランクス博士の口から「あやつならゼロツーの願い、叶えられるのかもしれんな」と語られ、「ゼロツーの願い」があることが明らかになりました。
では「ゼロツーの願い」とはなんでしょう?
「ボクはもっと叫竜を倒さなければいけないんだ」
真っ先に思い浮かぶのは、前述したような「人間」になることですが、それだけではないと私は考えています。
その理由として、第6話終盤で「ボクはもっと叫竜を倒さなければいけないんだ」と独白したことが挙げられます。
この独白に見られるように、ゼロツーは叫竜を倒すこと自体も目的としていると考えられます。
ただ単に「人間」になるだけならば、博士に叫竜の血を抜いてもらうだの何だのして「人間」になれるかもしれないのに、そうしない、あるいはそれができないということは、その過程にも意味があるということです。
つまり、ゼロツーは叫竜を倒していくことではじめて「人間」に近づけるのではないのでしょうか。
そしてそこに関連してくると考えられるのがゼロツー出生の謎です。
ゼロツー出生の謎
そもそもゼロツーはどのように誕生したのでしょうか?
一口に「叫竜の血を引く」とは言っても父親が叫竜で母親が人間なのか、父親が人間で母親が叫竜なのか、はたまた父も母もなく遺伝子だけ操作されて生まれたのか、定かではありません。
ただもし親のうちの片方が叫竜ならば、その叫竜はヒト型に近いのではないかと私は考えています。
あまり根拠と言える根拠でもないのですが、第6話で登場したグーテンベルク級の叫竜が角をはやした鬼のような容姿をしていたことと今までの叫竜を見比べてみると、叫竜はその強さのパラメタの深度が深くなるほどヒト型に近くなるのではないかという予測ができます。
叫竜は「コンラッド級」、「モホロビチッチ級」、「グーテンベルク級」の順に強くなっていると思われます。
この呼称と順番は、以前の考察でも述べたように、現実の地層の不連続面の名称と深さに対応しています。
そして「グーテンベルク不連続面」の次に深い不連続面と言えば「レーマン不連続面」です。
「レーマン級」=ヒト型?
「レーマン不連続面」は地球の外核と内核の境目、地表から約5100kmのところにあり、もはや地球の核(コア)の中に存在するものです。
これは完全に憶測にすぎないのですが、いずれ登場するであろう「レーマン級」の叫竜は完全なヒト型をしているかもしれません。
そしてもし「レーマン級」の叫竜がヒト型ならば、その叫竜こそがゼロツーの母親、あるいは父親なのかもしれません。
つまり、「ゼロツーの願い」とは叫竜を倒していくことで自身の母親や父親に出会うことかもしれないと考えられるのです。
今の段階ではこのような推測しかできませんが、ゼロツーが人類と叫竜の混血という特別な存在であることを考えると、ゼロツーの出生にはなにか重大な秘密があることは想像に難くありません。
この秘密も、本編が進めばいずれ明らかになることでしょう。
「鏡」に映ったゼロツーは人間を夢見るか?
今回はヒロがプレゼントした「鏡」から、ゼロツーの苦悩や目的、そして「ゼロツーの願い」について考察してきました。
「鏡」についてはOPにはじめから登場していることからもその重要性がうかがえ、今後カギになってくるアイテムだと考えられます。
ゼロツーの「鏡」が割れるとき、それは彼女の叫竜性が否定され、完全な人間となるときなのかもしれません。
はたして「鏡」に映ったゼロツーは「人間」になり得るのでしょうか。
今後の展開に期待です。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
<参考文献>
『鏡の境界性』 井手直人 (宗教研究 78(1), 1-21, 2004) 日本宗教学会
西洋思想史のなかの〈鏡〉|『鏡』|南京大学集中講義|LAP: TODAI Liberal Arts Program
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