ダリフラ世界の環境
「昔、オリオン座は冬の星座代表って言われてたらしいよ」
衝撃の一言です。
前回まではヒロの心臓の青がどうだの、血液がどうだのと語ってきましたが、それとは比にならないくらい鮮烈な一言です。
「血液」の謎には一度ふたをし、今回はこの戦慄すべきセリフが放たれた第7話を中心にダリフラ世界の環境を探っていきたいと思います。
ダリフラ世界の環境を探るにあたっては多くの手掛かりがありますので、まずは個々の手掛かりごとに考察し、その後それらを関連付けてダリフラ世界の環境の実体をあらわにしてゆきたいと思います。
個々の手掛かり
Ⅰ. オリオン座
1. 季節の転換
まず最初の手掛かりは「オリオン座」です。
はじめに「昔、オリオン座は冬の星座代表って言われてたらしいよ」というセリフから、ダリフラ世界ではある転換点を境にオリオン座が見える季節が変わったということがわかります。
このセリフを「昔は冬に見えていたけれど今は夏に見えているんだ!」と解釈するのは早計です。
昔は冬に見えていたけれど今は春に見えている、昔は冬に見えていたけれど今は秋に見えているということがありえるからです。
たしかに第7話の海岸の気候は夏のようでしたが、例えば現実のハワイのホノルルの海岸は春でも泳げる気候ですし、春にもオリオン座が観測できる位置にあります。
したがってここではひとまず、ダリフラ世界ではある転換点を境にオリオン座が見える季節が変わったとだけ言っておきます。
2. 月の限定
ただし地球上でオリオン座が見えるときはやはり限られており、特に月単位での限定が可能です。
まず、星座が見えるか否かは地球と太陽との位置関係で定まっています。
太陽と地球の位置関係とオリオン座の見える方向を簡単に書くと上のようになります。
この図からわかるように12月の地球の位置ならば、太陽の光が邪魔をしない夜に、世界中ほとんどの場所でオリオン座を見ることができます。
以上のことから、幅広くゆとりをもって9~3月までの範囲にしかオリオン座は観測できないため、第7話時点の月は9~3月のいずれかであると考えられます。
(もちろん12月というのは北半球では冬、南半球では夏ですから、季節と月はわけて考える必要があります。)
3. 北半球での観測
第7話で観測されたオリオン座は地上からの見え方などをもとに考えると北半球から観測されるオリオン座だと考えられます。
ヒロたちが見たオリオン座は画像からもわかる通り、最も明るい星であるα星のベテルギウスが左上に位置し、三ツ星が並んだオリオン帯とその下方に位置する2つの星を結ぶ直線が平行に近い関係になっています。
地上からそのような位置関係のオリオン座を観測できるのは北半球であり、南半球ではこれが逆に見えます。
例えば2017年12月1日01:00のオーストラリアのシドニーでは上の画像のようなオリオンが観測できます。*1
以上のことから、第7話の海岸ひいては第13プランテーションが現在移動している地域は北半球にあると考えられます。
4. 星の逆行
以下の2枚のカットを比較するとダリフラ世界では星座が逆行していることがわかります。
左がイチゴが指し示したオリオン座、右がエンディング直前に映し出されたオリオン座です。
これらからわかるように、第7話ではオリオン座が時間経過とともに左に傾いています。
現実世界においては、北半球ではオリオン座は時間経過とともに右へ傾くため、ダリフラ世界ではオリオン座、ひいては星座が逆行していると言えるでしょう。
ただし「逆行」というのはあくまで地球から星の動きを見たときの表現ですから、その点には注意が必要です。
5. 海岸から見た方角
第7話のオリオン座が北半球から観測したものであることを踏まえると、ヒロたちが過ごした海岸から見たかなり大雑把な方角が推測できます。
順を追って丁寧にオリオン座と海岸が見えるカットを追っていきましょう。
①まず前提として、海岸線はかなり湾曲しています。
周りが木々で囲まれていることや浅瀬に岩礁があることが手掛かりとなりえます。
②ヒロとイチゴは海岸線に沿って歩きます。
左のカットのイチゴの背後には崖と岩が映りこんでいます。
③海岸線に沿った方向の上空をイチゴ指さし「オリオン座が見える」と言います。
このカットからはイチゴがかなり高い角度を指さしていることがわかります。
④ヒロとイチゴの背後を視点にすると、画面のやや左側にオリオン座が見えます。
見上げたオリオン座の位置関係から考えると、このときにほぼ南中していると考えていいでしょう。
⑤流星を見上げるヒロの頭部付近に小さくオリオン座が見えます。
やや縮尺がおかしいように思えますが、画面右下には林のようなものが映っており、かろうじて前後との整合性がとれる状態にあると考えます。
⑥エンディング直前海岸からスライドしてオリオン座が映し出される。
このカットでは海岸線上にオリオン座が見えます。
これら①~⑥と時間経過やヒロたちの歩いた距離などを考え、方角にあたりをつけると以下のようになります。
直線と画像の枠線で囲まれ、方角がかかれた部分のどこかの方向に真南があります。
かなりいい加減ですが、①~⑥をあわせて考えるとこのような図にならざるを得ません。
①~⑤だけならば、上の画像のちょうど右上はじくらいの方向にオリオン座が南中しており、そこが真南だと言えるのですが、⑥の画像が衝撃的です。
時間経過やヒロたちが海岸を歩いたことを考慮しても、オリオン座が実質無限遠にあることをふまえると、ほんの数分で水平線上にオリオン座が移動することははっきり言ってあり得ません。
ただ①~⑤ならばなんとか整合性がとれなくもないことから、⑥はアニメ演出の都合上の「ウソ」と考えてもよいかもしれません。
ただ海岸線の湾曲やイチゴの指さした方向など、①~⑤でもかなり曖昧なので、この方角は参考程度にとどまります。
ただし、海岸線の方向が西になり得ることはないだろうという見当がつけられることは重要なポイントです。
ひとまず「オリオン座」から得られる手掛かりは以上です。
Ⅱ. 流星群
2つ目の大きな手掛かりは流星群です。
地球上において肉眼で観察できる流星群は限られており、観察できる月もおおよそ限定されているため、流星群の特定は重要な手掛かりとなり得ます。
流星群を特定するためには、まず放射点を知る必要があります。
放射点とは、そこを中心に流星が放射するという基準になる点のことです。
この見かけ上の放射点は流星群の名前の由来になっており、例えばオリオン座流星群は放射点がオリオン座付近にあるため「オリオン座流星群」と名付けられています。
では、第7話の流星群の放射点はどこにあるのでしょう。
ヒロとイチゴがオリオン座を見上げた後、ヒロは自身の正面から向かって右側を指さし、「見てイチゴ!流れ星だ!」と言います。
つまりこの場合放射点はヒロたちからみてオリオン座の右手の方向にあることになります。
残念ながら放射点そのものはアニメ本編で明確には確認できませんでしたが、以上の条件からかなり絞り込めます。
「Ⅰー2. 月の限定」と「Ⅰ-3. 北半球の観測」で見たように、第7話の舞台が9~3月の北半球であることとオリオン座右手に放射点があるという条件に見合う流星群はおそらく10月りゅう座流星群、こぐま座流星群、しぶんぎ座流星群の3つだと考えられます。
さらに本編では単位時間当たり大量の流星が観測できたことから、流星群の活動が最も活発である極大日も考えると、第7話は10月9日前後、12月22日前後、1月4日前後のいずれかであると考えられます。
ただしどうにも放射線がうまくかみ合わなそうなことや突発的な流星群があり得ること、大量の流星がふりそそいだことなどを鑑みると、やはりこれも参考程度にとどまってしまうと言わざるを得ません。
Ⅲ. 水平線に沈む夕日
都市廃墟の散策を終えた後、水平線に夕日が沈みます。
もちろん時期によって厳密な方角は変化しますが、日が沈むのはおおよそ西側です。
ただしこの日没の方向が西側か否かについては議論が必要なので、ここでは水平線に夕日が沈んだという事実だけを捉えておきたいと思います。
Ⅳ. 地図
第2話で七賢人が13都市のキッシングを許可する場面で地図が映ります。
画面下側に霞ヶ浦が確認されることなどから、キッシング予定地は現在の茨城県日立市付近ではないかという予測が成り立ちます。
予測に基づき現実世界の地図と照らし合わせてみると、霞ヶ浦の形や海岸線までがほぼ一致することがわかります。
このことから、ダリフラ世界では海面上昇がほぼないのではないかという推測ができます。
また地図には等高線のようなものが引かれていますが、これは現実の等高線とやや異なります。
例えば、茨城県付近の等高線を200m間隔で引くと上の画像のようになります。*2
ダリフラ世界の地図の等高線が何m間隔で引かれているのかは不明ですが、現実の地形とはやや異なっていることが予想されます。
これはもちろんマグマ燃料の採掘のせいでしょうから、おそらく今よりも高地は少なく、荒廃してより平野が多くなっていることは想像に難くありません。
ひとまず、以上が個々の手掛かりになります。
長くなりそうなので、個々の手掛かりを関連付けた考察は<後編>で行うこととします。
<後編↓>
<ダリフラ考察まとめはこちら↓>
*1:フリーソフトウェア "Stella Theater Lite" により描画
以下同様に星座の描画は "Stella Theater Lite" による
*2:Web等高線メーカー http://ktgis.net/lab/etc/webcontour/ にて作成