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ダリフラ本編考察⑦「血管」を走る運命

運命は「血管」を走る

これまでの考察では、苦悩に満ちた「青」の課題から、「赤」の人類仮説を導き出し、それらを結ぶマグマの「黄」について考えてきました。

今回はこれら「青」、「赤」、「黄」を貫く「血液」というテーマからダリフラの謎に迫っていきたいと思います。

 

 

心臓に巣食う青

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

まずは前回もふれたヒロの心臓に巣食う青を端緒として「血液」を考えていきたいと思います。

なぜヒロの心臓は青く変色したのでしょうか、そしてなぜ第6話ではそれがひいていったのでしょうか。

今回もこのヒロの心臓に巣食う青が生じたメカニズムの解明には至らなかったのですが、これまで本編で見られた事実を整理してゆくと、どうやら「酸素」がこの謎解明の手掛かりになっているのではないかということが見えてきました。

まずはこのヒロの心臓に巣食う青の謎に迫るべく、ヒロに現れた症状を整理してみます。

 

症状①心臓部が青く変色

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

まず1つ目の症状は、心臓部の青い変色です。

血管のようなものが体外に露出していることから、血液に何か異常をきたしていると言えるでしょう。

またそれが心臓部のみに見られるというのは重要な所見です。

ちなみに、真っ先にチャックをおろしたゴローは一見すごくえっちだと思われますが、まず罹患部を確認するという判断を下したとすればなかなか冷静だとも言えます。

 

症状②胸の痛み

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

次に胸の痛みです。

青く変色した部分に痛みがあるのか、肺が痛いのか、それとも心臓が痛いのかは議論の余地がありますが、倒れこむほどの痛みですから重度の痛みと言えるでしょう。

 

症状③血液中の異常値

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

「黄血球」に目がいきがちなこの場面ですが、ここにはヒロの血液に関する様々な数値が見て取れます。

整理すると以下のようになりました。

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ヒロの血液検査結果(改訂版)

まず断っておきたいのは、基準値内に数値がおさまらないとただちに異常となるわけではないということです。

基準値からの多少のズレは異常とは言い切れませんし、「基準値」もそれを定める機関によって幾分か増減があります。

ただし現実と同じ検査項目を用いていることや数値が異様なほどズレた項目がないことから、ある程度参考にしてよいと考えます。

検査結果に関しては後で細かく見ていきますので、ひとまず次の症状です。

 

<追記>

「ヒロの血液検査結果」を訂正しました。

訂正箇所は以下の2点です。

・「フィブリノゲン」の行の背景色赤→白、増減の列「↑」→「-」

・ヒロの白血球数の数値「10086」→「10.086」(単位はそのまま10^3/μL)

お詫びして訂正いたします。

 

症状④呼吸数の増加

本編からフランクスに乗る際は普段から呼吸が荒くなるということも考えられますが、第6話ではヒロはかなり激しく呼吸を繰り返しています。

 

症状⑤血管が浮き出る

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第6話「ダーリン・イン・ザ・フランクス」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

5つ目の症状は血管が浮き出たことです。

後で見るように、この血管が動脈なのか、静脈なのかがかなり重要になってきます。

しかしこの画像だけでは判断が難しいです

そもそも作画をされている方がそれを意識なさっているのかはわかりませんし、ヒロの人体の構造が現代人のそれと一致しているのかも一概には言えません。

『ダリフラ』にどこまでリアルさを要求していいのか、どこからがナンセンスなのかは非常に難しい問題なのですが、ひとまずここでは事実として「ヒロの血管が浮き出ていたこと」を症状としておきます

 

症状⑥目の充血

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第6話「ダーリン・イン・ザ・フランクス」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

6つ目は目の充血です。

これに関しては、第1話でゼロツーとストレリチアに同乗した081にも同じ症状見られます

小さいですが、よく見ると目が充血しています。

特殊検体であるヒロだけでなく、081にもこの症状が見られたというのが重要な点です。

 

症状⑦意識の喪失

最後の症状は意識の喪失です。

以上がヒロに現れた症状になります。

まとめると以下の通りです。

  1. 心臓部の青い変色
  2. 心臓部の痛み
  3. 血液に関する数値の異常
  4. 呼吸数の増加
  5. 浮き出た血管
  6. 目の充血
  7. 意識の喪失

これらのことはヒロの心臓の青の謎に迫る手掛かりとなると考えられます。

 

黄血球と抗酸化作用 

また、黄血球と抗酸化作用についても、ヒロの心臓の青の謎を探る重要な手掛かりとなると考えられます。

これまでの考察と5つの症状を照らし合わせると、どうやら黄血球は抗酸化作用を発揮する物質を運んでいるのではないかと考えられるのです。

まず注目したいのはヒロの赤血球数です。

 

多血症

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ヒロの血液検査結果(改訂版)

先ほどお見せしたこの表の最初の5項目を見てください。

ヒロの赤血球数は男性基準値の下限の1.5倍以上あり、ヘモグロビンだけで見てもHb(ヘモグロビン濃度)が基準値を大きく上回っています

これほどの数値ならば、現実では「多血症」と診断される可能性があります。

「多血症」には様々な原因があるのですが、ヒロの場合、その大元の原因は大気中の酸素量の減少にあると考えられます

 

「進化した人類」

以前本編考察⑤で述べたように、『ダリフラ』世界では環境破壊に伴い大気中の酸素量が減少しているということが考えられます。

大気中の酸素量が減ると単純に息苦しくなるばかりか、様々な生命活動が妨げられます

そこで人類は酸素を運ぶ赤血球の数を増加させ、薄い酸素でも活動できるように進化したのではないでしょうか。

こうして進化した人類が「オトナ」なのだと考えられます。

そしてヒロは、この「オトナ」の体をもとに創られたからこそ、赤血球数も多いままになっているのではないでしょうか。

しかし赤血球数だけが増えることには弊害があります。

 

活性酸素による老化促進

その弊害とは活性酸素による老化促進です。

少しわかりにくいのですが、赤血球数を増加させるというのは1度に吸収する酸素の量を増やすということなのです。

1度に吸収する酸素量が増えると、1度に細胞で生成される活性酸素の量も増えます

また、本編考察⑤で見たように『ダリフラ』世界では強力な紫外線が降り注いでいると考えられるのですが、強い紫外線を浴びることも体内の活性酸素の増加をもたらします

端的に言ってしまえば、活性酸素の増加はそのまま老化につながります

ではどうすればこの老化を防げるのでしょうか。

 

老化兆候

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『ダーリン・イン・ザ・フランキス』( 漫画/矢吹健太朗 原作/Code:000) より引用© SHUEISHA Inc.

このことのヒントになるのが、老化兆候です。

漫画版『ダリフラ』から、ゼロツーと乗ったヒロ以外のパラサイトたちには老化兆候が見られたことがわかります。

さらに、第5話でヒロの黄血球増加を見たハチのゼロツーと乗ったほかのパラサイトたちとは正反対の反応だ」というセリフから、今までゼロツーと同乗したパラサイトたちは黄血球数が減少したと考えられます。

これらのことは、黄血球数の減少は老化につながり黄血球数の増加は老化防止につながることを意味しているのではないでしょうか。

 

黄血球は抗酸化物質を運んでいる?

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

以上のことから導かれるのが、黄血球は抗酸化物質を運んでいるのではないかという仮説です。

抗酸化物質とは読んで字のごとく、細胞の酸化を抑制してくれる物質です。

もしその抗酸化物質が黄血球と結びついて、血流乗り体内の隅々にまで運ばれているのなら、コドモたちは赤血球が増えても老化が促進されず、また強力な紫外線が降りそそぐ野外でも活動できるのです

反対に、老化を抑制する働きをする黄血球が減少すると、081に見られるように、細胞の老化が進み、容姿も「大人」のようになってしまうと考えられます。

 

ゼロツーもアンチエイジング?

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第2話「繋がるということ」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

もしもこの仮説が正しいのなら、ゼロツーのハチミツ好きも理にかなっている、と言えるかもしれません。

古来から薬用として用いられてきたハチミツは強い抗酸化作用があることで有名です。

他のパラサイトとは違い叫竜の血が混じったゼロツーは、抗酸化作用のあるハチミツを大量に摂取することで体内の活性酸素の量をうまく調節しているのかもしれません。

 

コドモたちの寿命

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第6話「ダーリン・イン・ザ・フランクス」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

前述したように抗酸化物質には細胞の老化を抑制する働きがありますから、完全に老化を防ぐつまり不老不死は無理かもしれませんが、極端に寿命を延ばすことならば可能かもしれません

ここから浮かび上がってくる疑問はコドモたちの寿命です。

コドモたちはいったい何歳まで生きられるのでしょうか。

黄血球の運ぶ抗酸化物質の作用の強さによっては、コドモたちの肉体は半永久的に「子供」のままだということもありえなくはありません。

もちろんそんなに都合の良いことはありえず、細胞を酷使すればそれ相応の弊害が新たに生まれるとも考えられます。

ただ26部隊の面々やゼロツーなどを見ているとなんとなく精神年齢が容姿と乖離しているような感じは受けます。

このことは後々明かされるかもしれません。

 

酸素過剰か?欠乏か?

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第6話「ダーリン・イン・ザ・フランクス」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

ヒロに現れた症状と黄血球と抗酸化作用について考えることでわかったことは、「酸素」が重要なのではないかということです。

ヒロの症状についても、体内の酸素量が過剰になれば酸素中毒のような状態になり、胸の痛みや目の充血、意識の喪失がありえます

しかし反対に、体内の酸素量が極端に少なくなっても、酸素欠乏症のような状態に陥り、呼吸数が増加したり、血圧増加に伴い血管が浮き出たり、意識を失ったりすることがあります

ただヒロの体内で起こったことが酸素過剰なのか、酸素欠乏なのか見極めるにはもう少し手掛かりが必要です。

 

なぜヒロは復活したのか?

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第6話「ダーリン・イン・ザ・フランクス」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

ヒロの復活についても、ヒロの症状が酸素過剰によるものなのか酸素欠乏によるものなのかによって説明が異なります。

まず酸素が過剰である場合、ヒロが酸素過剰に適応し、黄血球を大量生産して過剰になった酸素を抑制し、正常に戻ったと説明できます。

また酸素が欠乏していた場合は、異常に増加していた黄血球数がもとの数値に戻ることにより、抗酸化作用が抑えられ、酸素がきちんと体をめぐるようになったと説明できます。

これも結局どちらかに断定することはできませんが、共通するのはなぜヒロが復活できたのかという疑問です。

これに関してはメンタルの部分がかなり作用していると考えられます。

 

パラサイトの心に呼応するフランクス

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第6話「ダーリン・イン・ザ・フランクス」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

これまでの考察では主に科学的な側面からのアプローチを試みましたが、『ダリフラ』では精神的な面が非常に重要であるということが考えられます

このことはフランクスの挙動がパラサイトのメンタルに大きく依存している様子から明らかでしょう。

ヒロが復活したのも独り戦うゼロツーの姿を見て、心境に変化があってのことだと考えられますから、ここには物理的には説明できない力が関わっているのでしょう。

 

 

改めてなぜヒロの心臓は青く変色したのか?

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第5話「キミの棘、ボクのしるし」より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

心臓に巣食う青の謎を完全に解明するにはまだ手掛かりが必要そうです……。

ただこれについて解明できれば、他の多くの謎も解けていくのではないかと考えています。

これに関する一番大きな謎はフランクスに関する謎です。

私は今の時点で、フランクスはその操作機構が脆弱すぎるのではないかと考えています。

叫竜という人類の脅威に立ち向かわなければならないというときに、なぜわざわざ男女ペアでしか動かせない機械を開発するのでしょうか

効率よく叫竜をせん滅するには全自動で叫竜のコアを粉砕してくれるマシーンを開発すればいい話です。

しかし逆に考えればここにこそ『ダリフラ』の肝があります。

男女ペアでないといけないこと、フランクスが少女自身であるということ、意識を同調させること、そこには心が介在していること、これらのことにこそ、フランクスがフランクスである理由があります。

フランクスがフランクスであるからこそ描かれる魅力は、『ダリフラ』を最後まで見届けたときに改めて実感することとなるでしょう。

長くなってしまいましたが、今回はこれまでです。

ヒロの心臓の青の謎については持ち越す形になってしまいましたが、今回も読者のみなさまの考察の一助となれば幸いです。

今回もお読みいただきありがとうございました。

それではまた次回お会いしましょう。

<次↓>