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ダリフラ本編考察②「ラマルククラブ」から読み解く『ダリフラ』の根源的テーマ

 

「ハチミツ」にまつわるモチーフを貫くテーマ

ハニカム構造

第2話より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

前回のダリフラ本編考察①では、『ダリフラ』においてハニカム構造を主として「ハチミツ」に関わるモチーフが描かれていたことを確認しました。

また、同時に「ハチ」に関連して、フランクスの名前の由来が被子植物属名、あるいは種名に由来すること、ステイメン・ピスティルはそれぞれおしべ・めしべを意味することを明らかにしました。

この「属名」「種名」「おしべ・めしべ」といった「ハチミツ」にまつわるすべてのモチーフを貫くのは、「生物」という概念です。

このようなくくり方は大胆で少々ずるいような気もしますが、この「生物」という概念は、実は『ダリフラ』の根幹となっているのではないかと考えられるのです。

今回は、そのような『ダリフラ』の根幹となっている「生物」というテーマを、「ラマルククラブ」という用語から導出するとともに、「ラマルククラブ」から想像しうる『ダリフラ』の可能性について考察していきたいと思います。

 

 

「ラマルククラブ」

まずはこの画像をご覧ください。

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第2話より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

これは『ダリフラ』本編第2話の一場面ですが、左下に「APE本部中央本部会議」および「ラマルククラブ」と記載されています。

"APE" とは、『ダリフラ』世界において「人類を統治している機関」*1です。

そしてこの『ダリフラ』世界の支配的機関の本部会議の名称こそ、「ラマルククラブ」です。

ではこの「ラマルククラブ」とはいったい何なのでしょうか。

 

博物学者ジャン=バティスト・ラマルク

結論から言うと、「ラマルククラブ」の由来になっているのは、博物学者ジャン=バティスト・ラマルクではないかと考えられます。

ラマルクとは19世紀フランスの著名な博物学者で、「生物学(biology)」という用語を創設した人物の一人です。*2

そのような功績からもわかる通り、ラマルクは生物を体系的に整理したことにその功績が認められます。

ラマルクはとりわけ、ハチなどの昆虫やミミズなどの蠕虫を含む「無脊椎動物」の詳細な分類に大きく貢献しました。

そしてそれよりも有名なのは、ラマルクが「忘れられた進化論の先駆者」*3と題されるように進化論の図式を明確に提示した人物であるということです。

しかし結果的にラマルクの提示した進化論の図式は、『種の起源』を記したダーウィンの進化論の影に身を潜めることとなってしまいます。

そしてこのラマルクの進化論とダーウィンの進化論の対立にこそ、「ラマルククラブ」という名をわざわざ表明する理由の一端が見受けられるのです。

 

 

ダーウィニズムVSラマルキズム

ラマルクの進化論

進化論の対立について正確に記述するには到底文字数が足りないのですが、簡潔に、わかりやすく、『ダリフラ』考察の文脈で、ほんの少しだけ語りたいと思います。

まず、ラマルクが唱えたと解釈される進化論には2つの大きな柱があります。

その2つの柱とは「用不用説」「獲得形質の遺伝」です。

「用不用説」とは、簡単に言えば、よく用いる器官は発達し、不用な部分は衰退あるいは消失してしまうという説です。

他方、「獲得形質の遺伝」とは、簡単に言えば、特定の条件の下では獲得された形質が遺伝するという説です。

この2つの説の例で一番わかりやすいのは、やはり「キリンの首」の進化の例です。

ラマルキズム(ラマルクの進化論支持派)からすれば、「キリンの首」は高いところにある木の葉を食べようとして恒常的に首を伸ばしていた結果、親から子へと首の形質が遺伝する過程で徐々に長くなっていったのだ、と考えられるのです。

つまりラマルキズムでは、キリンはたくさん首を用いた結果(用不用説)、その少し長くなった首という形質が順々に遺伝し(獲得形質の遺伝)、進化したと考えるのです。

 

生物の側に進化の主体があるか否か

このようなラマルクの「用不用説」「獲得形質の遺伝」といった思想に共通するのが、生物の側に進化の主体がある、ということです。

「用不用説」「獲得形質の遺伝」も、生物が自ら用いたあるいは獲得した形質が遺伝し、進化していく、つまり生物が自分で頑張って進化していくのだ*4、ということが根底にあるのです。

これに対して、進化の原動力は「自然選択」である、つまり生物の側には主体がない、とするのがダーウィンの進化論を主張するダーウィニズムの側です。

もちろん対立軸はこれだけにとどまらないのですが、ダーウィニズムVSラマルキズム、あるいはそれぞれの思想を引き継いだネオダーウィニズムVSネオラマルキズムという次元での主たる対立軸は、生物の側に進化の主体があるか否か、という軸です。

そして私たちの生きる世界においては、紆余曲折がありながらも、科学的な裏付けが十分なされなかったラマルキズムは影をひそめ、進化論の主役は、その正当性からダーウィニズムとその思想を受け継いだネオダーウィニズムが担ってきました

このような背景をふまえると、この現世の進化論の力関係が逆転しているのが『ダリフラ』の世界なのではないかという仮説が立ちます。

 

あえて「ラマルク」の名を語るということ

APE

第2話より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

話を整理しましょう。

我々が生きる現実世界では、進化論の対立において結局はラマルクの進化論よりもダーウィンの進化論が重視されてきました

しかし『ダリフラ』の世界では、「人類を統治している機関」= "APE" あえて「ラマルク」の名を冠した「ラマルククラブ」なる会議を設立しています。

このことから『ダリフラ』の世界においては、現実世界とは異なり、進化論や「生物」を考える上でラマルクの思想が支配者層の根本思想になっているのではないかと考えられます。

ただしラマルクの思想が重視されている程度はまだわかりません。

例えば、ラマルクの思想を "APE" がそのまま100%受け継いでいる場合も考えられますが、「ネオラマルキズム」のように「進化の主体性が生物側にある」というようなラマルクの思想の一部分しか継承していないことも考えられるのです。

ラマルクの思想がどの程度『ダリフラ』の世界で生かされているのか、それはやはり本編が進まなければ何とも言い難いです。

しかし「人類を統治する機関」がラマルクの名をあえて語っている限り、『ダリフラ』世界の支配の根底にはラマルクの思想の関与が認められ、やはり「生物」というテーマ、とりわけ「進化」「遺伝」といったテーマが深く関わっていることは確かでしょう。

 

「ラマルククラブ」から探る『ダリフラ』の可能性

倫理観のズレ

第1話より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

ラマルクの名を冠する「ラマルククラブ」を中心に据えた "APE" が統治する『ダリフラ』世界は、その発展の過程の背景にラマルクの思想があると考えられます。

"APE" が統治する世界には違和感を感じざるをえないのですが、例えば「コドモ」の存在はどのような倫理観から正当化されているのでしょうか。

「叫竜」と戦うためだけに創造され、名前も与えられず、番号で管理される「コドモ」という存在は、現実世界の倫理観ではとうてい是認されがたいように思われます

例えばの話ですが、ネオラマルキズムのように「生物の側に進化の主体があるのだ」という論をふりかざして、「叫竜」を排除するためにより都合よく遺伝子をデザインされより「進化」した「コドモ」が正当化されているのかもしれません。

 

なぜラマルクの思想が優位に立てたのか?

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第1話より ©ダーリン・イン・ザ・フランキス製作委員会

そもそも、『ダリフラ』世界が現実世界と進化論の力関係が逆転した世界だとするならば、そこに何か説得力のある理由がなければなりません。

もちろん "APE" が何か武力のようなうむを言わせぬ力で思想統制したという暴力的な可能性もなくはありません。

しかし『ダリフラ』世界ではラマルクの進化論の裏付けとなる事実が証明され、ダーウィンの進化論よりもより重視されるようになった、というような穏やかな過程も想像できます。

例えばそのラマルクの進化論の裏付けとなったのが「叫竜」だったとすればどうでしょうか。

「叫竜」が無生物から生じたのなら、それはラマルクの信じた「自然発生説」の裏付けになりますし、叫竜が進化の過程で「用不用説」や「獲得形質の遺伝」を証明したのかもしれません。

そう考えればより説得力は増します。

しかしこれらの可能性はあくまで可能性にすぎません。

 

 

「ラマルククラブ」から広がってゆく可能性

とにかく、第3話までしか放送されていない今の時点では、何か確定的なことを言うのはたいへん難しいことです。

しかし第3話までの段階でも、「ラマルク」をはじめとした「生物」というテーマを本編の諸所で確認することはできます。

そこで次回の考察では、この「生物」というテーマが『ダリフラ』世界でどのように反映されているのかということを見ていきたいと思います。

今回はひとまず、「ラマルククラブ」から「生物」というテーマを導出し、少し可能性を想像することにとどめておきたいと思います。

読者のみなさまもラマルクを手掛かりに『ダリフラ』の考察を楽しんでいただけたなら幸いです。

それではまた次回お会いしましょう。

<参考文献>

『ラマルク伝』 イヴ・ドゥランジュ 著 ベカエール直美 訳 (平凡社,1989)

『動物哲学』 ラマルク 著 小泉丹 山田吉彦 訳 (岩波文庫,1954)

『「進化論」を書き換える』 池田清彦 (新潮文庫,2015)

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※本ページの情報は2019年2月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT
サイトにてご確認ください。

*1:KEYWORD | TVアニメ「ダーリン・イン・ザ・フランキス」公式サイト参照

*2:もう一人はゴットフリード=ラインホルト・トレヴィラヌス

*3:『ラマルク伝』 イヴ・ドゥランジュ 著 ベカエール直美 訳 (平凡社,1989)副題より

*4:極限まで伝わりやすさを重視した表現です