野の百合、空の鳥

アニメ・漫画・文学を「読む」

【石浜真史OP・ED考察 】「不気味なもの」(フロイト)と「異質なもの」(バタイユ)の視点から

Ⅰ. 石浜真史と「不気味なもの/異質なもの」 ⅰ. 「不気味/異質」? さっそくだが何枚か画像を見ていただきたい。 石浜OPにおける「不気味/異質」なカット(上:『PSYCHO-PASS 2』(サイコパス製作委員会,2014)OPより、中:『PERSONA5 the Animation』(PERSONA…

『俺ガイル』9巻 考察・解説 だから「本物」を求め続ける

Ⅰ. 「欲しいものがあったから」 欲しいものがあったから。 たぶん、昔からそれだけが欲しくてそれ以外はいらなくて、それ以外のものを憎んですらいた。だけど一向に手に入らないから、そんあものは存在しないとそう思っていた。*1 つまるところ9巻は、八幡が…

『俺ガイル』8巻 考察・解説「こうして、比企谷八幡はまちがえる」

Ⅰ. 「まちがい」 自分が何かまちがえたのではないかという、その疑念だけが残った。 (渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。⑧』p.334より) 『俺ガイル』8巻のキーワードは「まちがい」だ。 7巻では「大事だから、失いたくないから」、だから「変…

『俺ガイル』7巻 考察・解説 「そうして、彼ら彼女らは嘘をつく。」

Ⅰ. 「だから、誰もが嘘を吐く。」 大事だから、失いたくないから。 隠して、装って。 だからこそ、きっと失ってしまう。 そして、失ってから嘆くのだ。失うことがわかっているなら手にしない方がマシだったと。手放して死ぬほど悔やむくらいなら諦めたほうが…

【俺ガイル考察】ようやく彼ら彼女らはお互いを「知る」【1~6巻まとめ】<後編>

<前編はこちら ↓> <前編>では、「知る」ということについて、特に八幡と由比ヶ浜の関係から、彼らが互いをどのように「知って」いったのかを見てきた。 <後編>においては、さらに八幡と雪乃の関係から「知る」ということを見つめ、『俺ガイル』第1章で…

【俺ガイル考察】ようやく彼ら彼女らはお互いを「知る」【1~6巻まとめ】<前編>

Ⅰ. はじめに ⅰ. 彼ら彼女らがお互いを「知り」、スタートラインに立つまでの物語 俺も、雪ノ下も、お互いのことを知らなかった。 何を持って、知ると呼ぶべきか。理解していなかった。 ただお互いの在り方だけを見ていればそれで分かったのにな。大切なもの…

【俺ガイル考察】5巻でカマクラがネコリンガルに残した言葉とは?

5巻でカマクラがネコリンガルに残した言葉とは? 『俺ガイル』5巻5章「ふと比企谷小町は兄離れする日を思う。」は、以下のような幕切れとなっています。 携帯を充電しようと充電器を探していると、カマクラがみーと鳴いた。 立ち上げたままのネコリンガルが…

【チェンソーマン 考察】田舎のネズミと都会のネズミ、どこにも行けないモルモット

Ⅰ. どこにも行けないモルモット 田舎のネズミと都会のネズミ どっちがいい?(『チェンソーマン5』より Ⓒ藤本タツキ,集英社) 「デンジ君はさ 田舎のネズミと都会のネズミ どっちがいい?」 ――夜の学校でそう尋ねる彼女は、どこか遠くを見つめていた。 数日…

【マギレコ解説】マギレコ2話がアニメーションとして優れている理由「ゴーシュバーガー」について

Ⅰ. 「4分間」 「4分間」、見ず知らずの人の会話を聞くところを想像してみてください。 カフェでも電車でも、なんとなく誰かの会話が気になって聞いてしまう、という経験は誰にでもあるのではないかと思います。 しかし、その会話をずっと聞いていたいなと思…

2019年をふりかえって

Ⅰ. もしも言葉がなかったら もしも言葉がなかったら、私たちはどういう存在になっているのだろうか。言葉のおかげで私たちは、現にあるような存在になっている。言葉だけが、限界で、もはや言葉が通用しなくなる至高の瞬間を明示するのである。だが、語る者…

『PSYCHO-PASS 3』7話 感想・考察 「神の名をみだりに唱えてはならない」

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『PSYCHO-PASS 3』5・6話 感想・考察 ビフロストの椅子/エターナルホワイト/出島

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『PSYCHO-PASS 3』考察 梓澤廣一と「地獄の季節」/「ラウンドロビン」=「パノプティコン」?<後編>

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『PSYCHO-PASS 3』考察 梓澤廣一と「地獄の季節」/「ラウンドロビン」=「パノプティコン」?<前編>

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『PSYCHO-PASS 3』4話 感想・考察 仕組まれた「パンとサーカス」

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『俺ガイル』14巻 感想・考察 だから青春は「本物」を求め続ける

「自意識の化物」がたどり着く先は、人間への不信、言葉への批判、そして本物の希求です。 疑り深い人は言葉の裏を読みたくなる、そうすると、人の心理が透けてくる。すると、もううわべだけの馴れ合いには気持ち悪さしか感じなくなる。だから本物の、もっと…

『PSYCHO-PASS 3』3話 感想・考察「ヘラクレスとセイレーン」の行方

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『PSYCHO-PASS 3』2話 感想・考察 「テウメソスの生贄」は報われるのか?

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

『PSYCHO-PASS 3』1話 感想・考察 「ライラプス」はテウメーッソスの狐を捕らえられるか?

※こちらはアニメ第3期放映時にリアルタイムで作成した記事です。その後の展開や明らかになった設定と食い違う点や推測を多分に含みます。記事を鵜呑みにせず、最新の情報をご確認ください。非公開にすることも考えましたが、いまだ活かせる情報もあるように…

<お知らせ>と<おまけ>

<お知らせ> 私事で多忙のため、9月と10月のブログ更新をお休みさせていただきます。 いつもお読みになってくださっている方々にはたいへん申し訳ありません。 ブログ更新の再開は11月の初旬を見込んでおります。 何かありましたら、Twitterの方でお知らせ…

【天気の子 感想・考察】『天気の子』は「幼稚」な物語なのか?④(完) なぜ物語には<子供らしさ>が描かれるのか?

【前回】 Ⅴ. 『天気の子』は「幼稚」な物語なのか? ⅰ. まとめ ⅱ. 〈子供らしさ〉とは何か ⅲ. なぜ物語には〈子供らしさ〉が描かれるのか? ⅳ. 『天気の子』は〈超道徳〉を要求しただろうか? ⅴ. 選択肢の「軽さ」 ⅵ. 誰かにとっての〈超道徳〉 Ⅵ. おわりに …

【天気の子 感想・考察】『天気の子』は「幼稚」な物語なのか? ③「大丈夫」は無責任な言葉か?

【前回】 Ⅳ. ③「大丈夫」は無責任な言葉か? ⅰ. 「大丈夫」は無責任な言葉か? ⅱ. 「悩むよりも『自分たちは次の世界に行くよ』って軽やかに飛びこえる若者たちの姿」 ⅲ. ラストシーンの苦悩と『大丈夫』という解決策 ⅳ. 『大丈夫』に込められた意味とは? ⅴ…

【天気の子 感想・考察】『天気の子』は「幼稚」な物語なのか? ②「世界なんて、最初から狂ってた」は免罪符か?

※この記事は①の続きです。①は↓ www.zaikakotoo.com Ⅲ. ②「世界なんて、最初から狂ってた」は免罪符か? ⅰ.「最大多数の最大幸福」か「一人の生命か」 ⅱ. 帆高は「世界なんてさ――どうせもともと狂ってんだから」を免罪符にしているか? ⅲ. 「決断・選択」を子…

【天気の子 感想・考察】『天気の子』は「幼稚」な物語なのか? ①「陽菜」を選ぶという選択は「幼稚」か?

『天気の子』は「幼稚」な物語なのでしょうか?本記事では①「陽菜」を選ぶという選択は「幼稚」か?②「世界なんて最初から狂ってた」は免罪符か?③「大丈夫」は無責任か?という3つの疑問から『天気の子』について考えていきたいと思います。

このアニメPVがすばらしい2019夏

一作品としてのアニメPV 遅くなってしまいましたが…… アニメPVそれ自体を評価しよう ちなみに前クールは…… 2019年夏シーズンのPV評価手順と基準 手順 基準(すべて10段階評価) このアニメPVがすばらしい2019夏 第4位 TVアニメ『とある科学の一方通行』番宣P…

直井文人は「神」である。 ―Angel Beats! への答え④―

11. 直井文人は「神」である。 12. 「理不尽な人生」 13. 救済 14. 死の秘匿性 15. 『Angel Beats!』 への答え 16. 神への「賭け」 17. 「それでも町は廻っている」 11. 直井文人は「神」である。 こうして彼は三度「神」となる。 最初に書いたように、彼も…

直井文人は「神」である。 ―Angel Beats! への答え③―

7. 神の人間化 8. 「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになるのですか」 9. 人間の神化 10. 元型 (Archetyp) 7. 神の人間化 こうしてヤハウェは「人間化」することになる。 しかし彼も神だ。ただの人間にはなろうとしない。 彼がなった人間は、人間は人…

直井文人は「神」である。 ―Angel Beats! への答え②―

4. 『ヨブへの答え』 5. 神 (ヤハウェ) の無意識 6. 神をも超えるヨブ 7. 神の人間化 4. 『ヨブへの答え』 カール・グスタフ・ユング (1875-1961) はスイスの心理学者・精神科医で、「ユング心理学」の創始者として有名だ。 ユングは著書『ヨブへの答え』で…

直井文人は「神」である。 ―Angel Beats! への答え①―

1. 「僕が神だ」 2. 神は平等で、愛に満ちている? 3. 神は理不尽である 1. 「僕が神だ」 人は死ぬとどこへ行くのだろうか。 天国に行くのか、地獄に行くのか、はたまた死んだら何もないのか。古今東西、死後の世界はいろいろな作品で描かれてきた。そんな死…

【ピンドラ 考察】ゼロから見直す『輪るピングドラム』②「蠍の火」とは何か【1~3話】

Ⅳ. 「蠍の火」とは何か ⅰ. 『銀河鉄道の夜』における「蠍の火」 Ⅴ. 「子供」は『銀河鉄道の夜』をどう解釈したのか ⅰ. 「愛の話」 ⅱ. 自己犠牲を伴うほどの「愛」は「さいわい」なのか? Ⅵ.「苹果」と「蠍の火」に残された解釈の余地 ⅰ. 『ピンドラ』という…